千曲川が流れる佐久盆地
佐久市の中心部は、千曲川の流域に形成された佐久盆地に広がっています。市内には岩村田、中込、野沢、臼田など、それぞれに特色を持つ市街地が形成されています。
佐久盆地は周囲を山々に囲まれているため、四季の変化がはっきりしており、晴天の日には遠くの山々まで見渡せます。標高が高く空気が澄んでいることから、夜には美しい星空が広がる地域としても知られています。
中山道と佐久甲州街道が交わる交通の要衝
佐久は古くから交通の要衝として発展してきました。江戸時代には中山道と佐久甲州街道が交わり、人や物が行き交う重要な地域となりました。
市内には岩村田宿、望月宿、八幡宿などの歴史的な宿場町が残され、街道沿いには本陣跡や寺社、古い建物などを見ることができます。現在の佐久市を歩くと、近代的な都市の風景の中に、街道文化の面影を見つけることができます。
岩村田・中込・野沢・臼田、それぞれの町の魅力
岩村田は、かつて中山道の宿場町として栄えた地域です。現在も岩村田宿の歴史を伝える寺社や老舗商店が残り、佐久平駅周辺の現代的な市街地とは異なる趣を楽しめます。
中込は、旧中込学校などの歴史的な見どころがある地域です。明治時代の近代化を伝える建築物をはじめ、文化施設や商店などが集まっています。
野沢は、佐久市南部の市街地として発展してきた地域で、寺社や商店街などに地域の歴史が残されています。
臼田は、宇宙・天文のまちとして知られる地域です。臼田宇宙空間観測所やうすだスタードームなど、佐久ならではの宇宙文化を体験できる施設があります。
新幹線と高速道路で発展した佐久平
現在の佐久市は、長野県東部を代表する中核都市の一つです。上信越自動車道や北陸新幹線の整備によって交通アクセスが大きく向上し、佐久平駅を中心に商業施設や住宅地が発展しました。
2005年には、佐久市、臼田町、浅科村、望月町が合併して現在の佐久市が誕生。東信地方における交通・商業・医療・文化の拠点として、さらに存在感を高めています。
佐久市と宇宙の深いつながり
佐久市を特徴づける大きな要素の一つが宇宙・天文です。旧臼田町では「星の町」を掲げた地域づくりが行われ、現在も宇宙観測に関する施設が地域のシンボルとなっています。
臼田宇宙空間観測所は、宇宙探査機との通信などに利用されてきた大型のパラボラアンテナを備える宇宙観測施設です。現在は美笹深宇宙探査用地上局の整備も進み、佐久は日本の宇宙開発を支える地域の一つとなっています。
また、佐久市はJAXAの施設を持つ自治体などで構成される銀河連邦にも加盟しています。星空だけでなく、実際の宇宙開発と地域文化が結びついている点が、佐久ならではの魅力です。
うすだスタードームで星空を観察
うすだスタードームは、本格的な天体観測を楽しめる公開天文台です。口径60センチメートルの反射望遠鏡を備え、月や惑星、星雲などさまざまな天体を観察できます。
周囲に大きな街の明かりが少なく、空気が澄んだ佐久ならではの美しい星空を楽しめるのが魅力です。天候が悪い場合には星空のスライドショーなども行われ、宇宙や天文学を身近に感じることができます。
日本で海から最も遠い地点
佐久市には、地理的にもユニークな場所があります。それが「日本で海から一番遠い地点」です。
この地点は旧臼田町の山間部に位置し、海岸線からの距離が日本で最も長い地点とされています。周囲には深い山林が広がり、日本列島のほぼ中央部に位置する佐久の内陸性を象徴する場所となっています。
観光地としては静かな山間部ですが、「日本で海から最も遠い場所」を訪れるというユニークな旅の目的地としても注目されています。
佐久を代表する山・荒船山
荒船山は標高1,423メートル、日本二百名山の一つに数えられる名峰です。長い年月にわたる侵食によって形成されたテーブル状の山頂と、約200メートルにも及ぶ切り立った断崖が特徴です。
山頂付近には独特の平坦な地形が広がり、遠くから眺めてもひと目で分かる特徴的な山容をしています。複数の登山コースが整備され、登山者にも人気があります。
荒船山の登山口・内山峠
内山峠は、長野県佐久市と群馬県の県境に位置する峠です。荒船山の登山口として知られ、登山やハイキングの拠点となっています。
周辺には姫岩、屏風岩、ナポレオン岩などの奇岩が点在し、独特の山岳景観を楽しめます。春から秋にかけては季節ごとの自然が美しく、夕景の名所としても知られています。
奇岩が連なる内山峡
内山峡は、荒船山周辺の山々を流れる川によって形づくられた渓谷です。姫岩、ナポレオン岩、屏風岩、ローソク岩など、さまざまな形の岩が連なり、独特の景観をつくり出しています。
春にはハナモモが咲き、秋には紅葉やコスモスが渓谷を彩ります。特に夕日に照らされた奇岩と山々の風景は美しく、四季を通じて自然の表情を楽しめる場所です。
佐久市最高地点・大河原峠
大河原峠は標高2,093メートルに位置し、佐久市の最高地点にあたる峠です。蓼科山への登山口としても利用され、夏でも涼しい高原の空気を感じることができます。
晴れた日には佐久平を見渡す雄大な眺望が広がり、夜には満天の星、早朝には美しい朝焼けを見ることができます。標高の高さを生かした山岳景観が魅力です。
佐久スキーガーデンPARADA
佐久スキーガーデンPARADAは、佐久平パーキングエリアから高速道路を降りることなくアクセスできる珍しいスキー場です。
南パラダからは八ヶ岳や佐久平、北パラダからは浅間山を望むことができ、冬はスキーやスノーボード、春から秋にかけてはアスレチックなどのアウトドアレジャーを楽しめます。
佐久平ハイウェイオアシス「パラダ」
佐久平ハイウェイオアシス「パラダ」は、佐久平パーキングエリアからジャンボエスカレーターでアクセスできるレジャー施設です。
キッズランド、観光リフト、ドッグラン、昆虫体験学習館などがあり、子どもから大人まで一日を通して楽しめます。高速道路のサービスエリアと観光施設が一体になった、佐久ならではの立ち寄りスポットです。
歴史を伝える旧中込学校
旧中込学校は、1875年(明治8年)に建てられた、現存する日本最古級の洋風学校建築です。重要文化財および国史跡に指定され、明治初期の教育と近代化を伝える貴重な建築物となっています。
建物には美しいステンドグラスが使われ、特徴的な八角形の太鼓楼も残されています。西洋建築を取り入れながら、日本の大工技術によって造られた明治時代の学校建築を間近に見ることができます。
龍岡城五稜郭
龍岡城五稜郭は、江戸時代末期に築かれた西洋式の城郭です。函館の五稜郭と並び、日本に2か所しかない五稜郭の一つとして知られています。
現在は堀や土塁の一部が残り、星形をした特徴的な城郭の姿を確認できます。城内には「お台所」と呼ばれる建物も残されており、国史跡に指定されています。
五稜郭の形をよりよく理解するには、周辺の高台から全体を眺めるのもおすすめです。幕末の日本が西洋式の築城技術を取り入れようとした歴史を感じられる貴重な史跡です。
中山道の宿場町・望月宿
望月宿は、中山道六十九次の25番目の宿場町として整備された歴史ある町です。江戸時代には多くの旅人が行き交い、本陣や旅籠が軒を連ねていました。
現在も宿場町の面影が残り、真山家住宅などの歴史的建造物や佐久市立望月歴史民俗資料館を通して、当時の暮らしを知ることができます。
中山道八幡宿と八幡神社
八幡宿も中山道沿いに整備された歴史地区の一つです。皇女和宮が宿泊したとされる本陣跡など、江戸時代の街道文化を伝える史跡が残されています。
近くの八幡神社には、国の重要文化財に指定されている高良社があり、宿場町と神社文化をあわせて訪ねることができます。
ぴんころ地蔵と健康長寿の町
ぴんころ地蔵は、成田山薬師寺の参道に建立されたお地蔵様です。「健康で長生きし、最後は苦しまずにころりと」という願いを込めた健康長寿の象徴として親しまれています。
毎月第2土曜日には「山門市」が開催され、地元の農産物や特産品などが並び、多くの人で賑わいます。佐久の食文化や地域の日常に触れられる機会でもあります。
佐久の食文化・水田養鯉
佐久では古くからコイの養殖が盛んに行われてきました。特に特徴的なのが、水田を利用してコイを育てる「水田養鯉」または「稲田養鯉」と呼ばれる伝統的な養殖方法です。
水田にコイを放し、稲の成長とともに育て、秋の稲刈りの時期に水揚げします。黄金色の稲田からコイが引き上げられる光景は、佐久の秋を象徴する風景の一つです。
信州そばの名店を巡る
豊かな水と高原の気候に恵まれた佐久では、信州そばも代表的な食文化です。
佐久の草笛では、自社栽培のそば粉を使ったそばを味わうことができ、名物のくるみそばも人気です。店内ではガラス越しにそば打ちを見ることができ、信州そばの文化を目で楽しめるのも魅力です。
らいあん・はぎわらでは、独自の製法による「水萌えそば」をはじめ、浅間高原産や信州奈川産のそば、郷土食の煮こじ蕎麦などを味わえます。
佐久のご当地ラーメン「安養寺らーめん」
佐久には、信州味噌を使ったご当地ラーメンがあります。それが「安養寺らーめん」です。
地元の安養寺味噌をベースにした味噌ラーメンで、濃厚な味噌の風味と佐久ならではの食文化を一緒に楽しめます。麺や天鳳などの店で味わうことができ、味噌味だけでなく、しょう油、塩、つけ麺、担々麺なども楽しめます。
老舗味噌店・和泉屋商店
和泉屋商店は、1853年(嘉永6年)創業の歴史ある味噌店です。佐久平の水と厳選した国産原料を使い、まろやかな風味とコクを持つ味噌を製造しています。
味噌そのものだけでなく、味噌漬け、味噌煎餅、フリーズドライ味噌など、味噌を使ったさまざまな商品も販売されています。佐久の食文化を持ち帰る土産としても楽しめます。
佐久の日本酒と老舗酒蔵
豊かな地下水に恵まれた佐久は、日本酒の産地としても知られています。
大澤酒造は元禄2年(1689年)創業の老舗酒蔵です。敷地内には大澤酒造民俗資料館があり、酒造道具や歴史・民俗資料などを見学できます。酒造りの歴史に触れながら、日本酒の試飲や購入も楽しめます。
武重本家酒造では、蓼科山の伏流水など豊かな地下水を使い、「御園竹」「牧水」などの日本酒を醸造しています。春には酒蔵見学や利き酒を楽しめる機会もあります。
千曲錦酒造も佐久を代表する酒蔵の一つです。千曲川や浅間山系の伏流水を使い、代表銘柄「千曲錦」などを醸造しています。酒蔵の見学や試飲、限定酒の購入なども楽しめます。
佐久市立近代美術館
佐久市立近代美術館 油井一二記念館は、駒場公園内にある美術館です。日本画、油彩画、彫刻、工芸など幅広いジャンルの作品を収蔵し、コレクションは3,000点を超えます。
平山郁夫をはじめとする日本の近代美術を代表する作家の作品などを鑑賞でき、自然豊かな公園散策とあわせて芸術を楽しめます。
川村吾蔵記念館
佐久市 川村吾蔵記念館は、佐久市出身の彫刻家川村吾蔵の作品を紹介する記念館です。
吾蔵は海外でも活動し、野口英世をはじめとする人物の肖像作品などを数多く制作しました。彫刻作品を通して、明治から昭和にかけて海外へ活動の場を広げた日本人芸術家の足跡を知ることができます。
比田井天来と書道文化
佐久市立天来記念館では、「現代書道の父」と呼ばれる書道家比田井天来の功績を紹介しています。
書作品だけでなく、筆や落款などの関連資料、天来の門流にあたる書家たちの作品も展示され、近代以降の日本の書道文化について知ることができます。
島崎藤村旧宅
島崎藤村旧宅は、文学者・島崎藤村が小諸義塾の教師をしていた時代に暮らした家を復元したものです。
藤村はこの時期に信州の自然や人々の暮らしに触れ、代表作『破戒』の執筆にも取り組みました。土間や囲炉裏などを備えた建物から、明治時代の生活と文学者の暮らしを感じることができます。
自然の中で楽しむ温泉
佐久市周辺には、高原の自然を楽しみながら温泉に入れる施設も充実しています。
布施温泉は浅間山を望む日帰り温泉施設で、露天風呂やジャグジー、ドライサウナなどを備えています。隣接する公園ではマレットゴルフや散策も楽しめます。
春日温泉では、蓼科山の自然に囲まれた環境で源泉かけ流しの温泉を楽しめます。温泉付きの客室やプール、テニスコートなども備えたかすがの森は、温泉と高原リゾートを組み合わせた滞在にも適しています。
道の駅で味わう佐久の恵み
道の駅 ヘルシーテラス佐久南は、佐久南IC近くにある観光拠点です。プルーンをはじめとする農産物や加工品、地酒などが並び、佐久の食をまとめて楽しめます。
地元食材を使った料理やランチバイキング、米粉パン、そば打ち体験などもあり、単なる休憩施設ではなく、佐久の食文化を体験できる場所となっています。
道の駅 ほっとぱーく浅科では、佐久を代表するブランド米「五郎兵衛米」などの特産品を販売しています。レストランでは五郎兵衛米を使った郷土料理を味わうことができ、浅間山を背景にした美しい田園風景も魅力です。
軽井沢ブルワリーでビールを知る
軽井沢ブルワリー軽井沢工場では、浅間山の名水を使った「THE軽井沢ビール」が製造されています。工場見学ではビールが完成するまでの工程を学ぶことができ、できたてのビールを味わえる機会もあります。
佐久の豊かな水が、日本酒だけでなくビールなどの醸造文化を支えていることを実感できるスポットです。
雨川ダムとエメラルドグリーンの湖
雨川ダムは、山間部に造られた砂防ダムです。独特のエメラルドグリーンの湖水が神秘的な景観をつくり出し、周囲の森林と組み合わさった美しい風景を楽しめます。
周辺の林道は「日本で海岸線から一番遠い地点」へ向かうルートにもつながっており、山深い佐久の自然を感じられる場所です。
あらふね湖と内山牧場
あらふね湖は、内山牧場キャンプ場内にある湖です。湖畔には遊歩道が整備され、自然の中を散策できます。
7月から8月にかけては、準絶滅危惧種に指定されているアサマフウロが花を咲かせます。湖畔の自然を楽しむだけでなく、釣り堀も利用でき、キャンプと組み合わせたアウトドア観光にも適しています。
秋を彩るコスモス街道
コスモス街道は、内山峡付近の国道254号沿い約9キロメートルにわたってコスモスが咲く人気のドライブコースです。
見頃となる9月上旬から下旬には、道路沿いをピンクや白のコスモスが彩り、秋らしい美しい風景が広がります。秋にはコスモスまつりも開催され、花を目的とした観光客で賑わいます。
森林セラピーと癒やしの自然
佐久市は森林セラピー基地としても認定されており、豊かな森林を生かした自然散策や森林浴を楽しめます。
標高の高い山々、澄んだ空気、豊かな森林、静かな渓谷など、都市部では味わえない環境が広がっています。登山のような本格的なアウトドアだけでなく、ゆっくり歩きながら自然を感じる旅にも適しています。
歴史と自然、宇宙と食が交差する佐久市
佐久市は、浅間山や荒船山、蓼科山に囲まれた自然豊かな高原都市でありながら、中山道の宿場町や五稜郭、明治時代の学校建築、寺社など、長い歴史を伝える文化財にも恵まれています。
さらに、臼田宇宙空間観測所やうすだスタードームに象徴される宇宙・天文のまちとしての顔、信州そばや安養寺らーめん、鯉料理、味噌、日本酒などの豊かな食文化も佐久の大きな魅力です。
春にはハナモモや新緑、夏には高原の涼しさ、秋にはコスモスや紅葉、冬には雪景色とスキーを楽しむことができ、四季を通じて異なる表情を見せてくれます。
歴史を歩き、山を眺め、温泉につかり、地元の食を味わい、夜には星空を見上げる。そんな多彩な旅を一つの地域で楽しめるのが、佐久市の魅力です。東信州を訪れる際には、観光施設だけでなく、街道や宿場町、山里、酒蔵、農村風景までゆっくり巡ることで、佐久という土地の奥深さをより感じることができます。