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おなっとう

発酵の知恵とやさしい甘みが詰まった伝統の味

佐久市に伝わる郷土料理

おなっとうとは、長野県東部に位置する佐久市(佐久地域)に古くから伝わる発酵食品で、ご飯に麹(糀)を混ぜて発酵させて作る甘い郷土料理です。「おなっとう」という名称は、現在一般に知られる「納豆」(糸を引く豆の発酵食品)とは異なり、米を主原料とした発酵料理を意味しています。

この料理は、麹菌が米のデンプンを分解して糖分に変えるという、自然の発酵作用を活かしたもので、ほんのりとした甘さとやわらかな舌触りが特徴です。黒豆やササゲなどを加えたバリエーションもあり、寒い季節に家庭で楽しまれる伝統的な味です。

おなっとうの歴史と文化的背景

「おなっとう」の語源と納豆との違い

佐久地方では、古くから二種類の「なっとう」が存在していました。一つは豆を発酵させた「糸引き納豆」、もう一つが米と麹を発酵させた「なっとう」、すなわち本項で紹介する「おなっとう」です。米を原料とするなっとうの方が、五穀の中でも位の高い「米」を使用していることから、敬意を込めて「おなっとう」と呼び分けられるようになったと言われています。

味噌づくりと発酵文化の副産物

かつての佐久の家庭では、味噌を自家製で作るのが一般的でした。その過程で余った米麹を有効活用する手段として、おなっとうは自然に生まれたとされています。冬の寒さの中、こたつの中などで一晩保温することで発酵を促し、滋味豊かな甘味が引き出されるおなっとうは、暮らしの知恵とともに育まれてきた味なのです。

現代における食文化の変化と減少傾向

近年では、味噌作りを家庭で行う機会が減少し、それに伴いおなっとうを手作りする家庭も少なくなってきています。しかし、炊飯器などの現代的な調理器具を使えば、手軽に再現することができ、発酵食としての価値や健康的な特性が見直され、注目を集めつつあります。

おなっとうの作り方

基本材料と分量の目安

おなっとうの基本的な材料は以下のとおりです。

調理手順

  1. うるち米を炊飯器で炊き、炊き上がったご飯を30℃程度まで冷まします。
  2. 米麹をぬるま湯に30分程度浸しておきます。
  3. 冷ましたご飯と浸した麹をよく混ぜ合わせ、炊飯器の保温機能で5時間ほど発酵させます。
  4. 発酵が進み、全体が白くとろりとした状態になったら取り出します。
  5. 仕上げに煮た黒豆やササゲ、甘納豆、またはお好みで団子やイチゴなどのフルーツを加えて完成です。

調理のコツと注意点

おなっとうを美味しく作るポイントは、ご飯の温度管理にあります。ご飯が熱すぎると麹菌が死んでしまい発酵が進まず、逆に冷たすぎると酸味が出てしまいます。30℃前後を目安に保ちつつ、30分ごとにかき混ぜて発酵の様子を確認するのが理想的です。

また、もち米を使うことでより甘味の強いおなっとうを作ることも可能です。季節や室温に応じて保温時間を調整することで、より理想的な味わいに近づけることができます。

保存方法

出来上がったおなっとうは、冷蔵庫で保存することで数日間楽しむことができます。甘みのある発酵食品として、お茶請けや朝食の一品、デザート代わりとしても重宝されます。

食べ方と楽しみ方

お茶請けや餅との相性も抜群

完成したおなっとうは、そのままでも十分に美味しく、お茶請けやおやつとして楽しむことができます。特に、お正月や寒い時期にはお餅につけて食べるスタイルが人気で、ほのかな甘さと餅の食感が絶妙に調和します。

甘酒としてのアレンジ

また、水を加えて温めることで、甘酒のような飲み物としても楽しむことが可能です。市販の甘酒と異なり、家庭で発酵させた自然な甘味と香りが楽しめるのが魅力です。

現代風アレンジの可能性

近年では、おなっとうにフルーツやナッツ、ヨーグルトを加えたアレンジレシピも登場しています。発酵食品としての健康効果も期待され、スイーツ感覚で手軽に栄養を摂取できるとあって、若い世代からも注目されています。

まとめ:おなっとうに込められた郷土の知恵

長野県佐久市に古くから伝わる「おなっとう」は、米と麹という身近な素材を使って、発酵の力で甘味を引き出す知恵の詰まった料理です。生活の中で余った材料を無駄なく活かす工夫、季節とともに暮らす知恵、そして家族を想う温かい心が、この一椀に込められています。

日々の食卓からは姿を消しつつあるものの、発酵食品としての価値やさしい味わい、そして地域文化の象徴として、再び脚光を浴びる日も遠くないでしょう。佐久地域を訪れた際には、ぜひこの「おなっとう」に出会い、郷土の味にふれてみてください。

Information

名称
おなっとう

上田・小諸・佐久

長野県