岩鼻は、長野県上田市と埴科郡坂城町の境付近、千曲川(信濃川の長野県内での呼称)沿いに位置する自然の景勝地です。千曲川を挟んで対峙するように聳える断崖は、左岸の「半過岩鼻」と右岸の「下塩尻岩鼻」と呼ばれています。
左右に対峙する険しい崖が印象的で、自然の力強さを感じさせる地形が特徴となっています。この一帯は、長野県指定の天然記念物であり、豊かな地質学的価値を有する貴重な自然遺産です。
岩鼻は、千曲川を挟んで左岸側に「半過岩鼻(はんがいわばな)」、右岸側に「下塩尻岩鼻(しもしおじりいわばな)」がそびえる独特の地形です。崖の高さは約120メートルにも及び、まるで山の一部が突然裂けて生まれたかのような迫力があります。
半過岩鼻は柱状節理が発達した石英角閃石ひん岩、下塩尻岩鼻は緑色凝灰岩(いわゆるグリーンタフ)を主体としており、この地質の違いは、崖の間に「千曲川断層」と呼ばれる断層が存在していることを示唆しています。
この珍しい地形と地質の重要性から、1974年1月14日付で長野県の天然記念物(地質鉱物)として指定されました。指定範囲は「小泉、下塩尻及び南条の岩鼻」と呼ばれる約13ヘクタールに及びます。
岩鼻周辺は、寒地系植物が自生する特異な環境であり、本州に位置しながら北海道や樺太に分布する「モイワナズナ」などの植物も確認されています。自然観察にも適した地域です。
江戸時代の地誌『信濃奇勝録』には「岩端の蛍」として記されており、かつては夏至の3夜を中心にホタルが群れ飛ぶ様子が「蛍合戦」と呼ばれ、信州随一のホタルの名所として知られていました。現在でも上田市下塩尻の用水路ではホタルの保護活動が行われています。
また、岩鼻はチョウゲンボウの集団繁殖地としても知られており、バードウォッチング愛好者にとっても魅力的なスポットとなっています。
かつてこの場所より上流には大きな湖が存在し、千曲川が岩鼻を浸食したことで現在のような崖と川の地形になったと伝えられています。この湖にまつわる伝承や地名も多く、「塩尻(しおじり)」は湖の北端を意味する「潮尻」に由来するとされ、また南佐久地方には「海の口」や「海尻」などの地名が残されています。
地域に伝わる有名な民話では、大ネズミが村を荒らしていたところ、村人たちが大きなネコ(唐猫)を放ち、岩鼻に追い詰めた結果、ネズミが岩をかじって川の流れを生み出したという話が残っています。この時、大洪水によってネズミも猫も流されてしまったとされます。
この伝説にちなみ、「鼠(ねずみ)」という地名が坂城町南条に存在し、また、唐猫が流れ着いたとされる長野市篠ノ井には、「唐猫神社(軻良根古神社)」が今も建立されています。
岩鼻に関する民話は他にもあり、日本各地で語られる巨人「ダイダラボッチ」や、上田地域の伝説の人物「小泉小太郎」がこの地形を形成したとされる物語が伝えられています。特に小泉小太郎については、松本盆地を開拓した英雄「泉小太郎」と同一視されることもあります。
半過岩鼻は柱状節理が発達した石英角閃石ひん岩、下塩尻岩鼻は緑色凝灰岩(グリーンタフ)を主な構成としています。これらの岩質の違いは、「千曲川断層」と呼ばれる断層の存在を物語っており、地質学的にも注目されています。
かつてはこの両岸の崖が陸続きで、冠着山から四阿山へと続く地形でしたが、千曲川の浸食作用により現在のような断崖となりました。崖の高さはおよそ120メートルで、崖の上部にはかつての河床の礫が確認され、千曲川の変遷を示しています。
岩鼻は古くから人々に知られ、『源平盛衰記』の中では「塩尻狭」として登場します。また、岩鼻は「岩端」「岩花」「巖華」といった表記もなされてきたことから、地域の文化や歴史にも深く関わってきたことがうかがえます。
この地域は古くから交通の要所であり、江戸時代には北国街道が通り、埴科郡・更級郡・小県郡の三郡が接する地点でした。加賀藩の参勤交代の際には、前田氏が地形の険しさを憂慮して金沢に使者を送り、無事を知らせる習慣があったと伝えられています。
岩鼻上流がかつて湖であったという伝承があり、「塩尻」という地名は、その湖の北端「潮尻」に由来するとも言われています。南佐久郡に見られる「海の口」「海尻」「海瀬」などの地名も同様の由来をもつと考えられています。
有名な伝承では、村を荒らした大ネズミを追って唐猫(巨大な猫)が岩鼻まで追い詰めた結果、大ネズミが岩を食い破り、上流の湖が決壊して水が一気に流れ、大ネズミや唐猫もろとも流されてしまったとされています。この伝説は、坂城町南条の「鼠(ねずみ)」という地名や、長野市篠ノ井の「唐猫神社(軻良根古神社)」にも関係しています。
この地には日本各地に伝わる巨人の妖怪「ダイダラボッチ」や、上田地域に伝わる英雄「小泉小太郎」が岩鼻を破ったという伝承も残っています。小泉小太郎は松本盆地の開拓者「泉小太郎」と同一視されることもあり、広域にわたる民話として語り継がれています。
JR北陸新幹線「上田駅」から路線バスで18分、「上田 道と川の駅」バス停下車。
上信越自動車道「上田菅平IC」から約9km(車で15分)。駐車場(普通車50台)あり。
大正時代に「日本百景」に関連する写真に岩鼻が写っていたことを記念して整備されました。半過岩鼻の上に位置し、上田市街を一望できます。春はぼんぼりで照らされた夜桜と夜景が共演する美しい光景が広がります。
上田駅からバスで16分、徒歩30分。
上田菅平ICから約10km(車で30分)。
しなの鉄道「テクノさかき駅」よりタクシーで約5分。
上信越道「坂城IC」から約4km(車で5分)。ただし駐車場はありません。
長野県上田市と坂城町にまたがる「岩鼻」は、地質・歴史・文化・生態系のすべてにおいて重要な景勝地です。自然の雄大さと古来からの伝承が融合したこの地は、訪れる人々に多くの感動を与えてくれることでしょう。地元の人々にとっても誇りであり、旅人にとっても忘れがたい場所となること間違いありません。