霊泉寺温泉は、長野県上田市(旧・信濃国)にひっそりと佇む、小さな温泉地です。周囲を山々に囲まれ、歴史と自然の調和が感じられる静かな環境の中にあります。観光地としての華やかさはありませんが、訪れる人々にとってはまさに心身を癒す隠れた名湯として親しまれています。
霊泉寺温泉の泉質はアルカリ性単純温泉(低張性・アルカリ性・高温泉)で、源泉温度は約42℃となっています。無色透明で、やわらかい肌触りが特徴の湯は、刺激が少なく、赤ちゃんからお年寄りまで安心して入浴できるのが魅力です。
また、泉質には石膏性苦味泉としての性質も含まれており、健康促進や疲労回復に効果があるとされています。特に神経痛、リウマチ、皮膚病、運動器障害などに良いとされ、湯治場としても利用されています。体の芯から温まり、自然と調和した環境で心身共にリラックスできるのが霊泉寺温泉の魅力です。
霊泉寺温泉の温泉街は、霊泉寺の先に続く細い道沿いに、わずか数軒の旅館が建ち並ぶのみという、非常にこぢんまりとしたものです。この地域には飲食店、土産物店、コンビニエンスストアなどの商業施設が一切ありません。そのため、訪れる際は事前に食事や買い物を済ませておくことが推奨されます。
この小さな温泉地には1軒の共同浴場が存在し、地元の方々や宿泊者に親しまれています。地味ながらも、源泉かけ流しの良質な湯を楽しめるこの浴場は、霊泉寺温泉の素朴な魅力を体感できる貴重な施設です。
霊泉寺温泉の開湯は、古い伝承によると968年(安和元年)にまでさかのぼります。この年、霊泉寺が建立された際に、その傍らから温泉が湧き出たとされています。ただし、別の説では1278年(弘安元年)の建立とする見方もあり、年代にはいくつかの異説が存在します。
これらの年代に関する混乱の背景には、1877年(明治10年)に起こった火災が関係しています。この火事により、霊泉寺の大部分が焼失し、多くの歴史的記録が失われてしまったのです。温泉の歴史や当時の寺の様子についての詳細は、現在も多くが不明のままとなっています。
また、別の伝承によれば、平安時代の武将平維茂(たいらのこれもち)が、戸隠の鬼女退治(紅葉伝説)を果たした帰路、この霊泉寺温泉に立ち寄り、戦いで負った傷を癒したとも言われています。まさに、古来より多くの人々に癒しを与えてきた温泉といえるでしょう。
昭和31年6月15日には、当時の厚生省告示第152号により、霊泉寺温泉は鹿教湯温泉・大塩温泉とともに「内村温泉」の一部として国民保養温泉地に指定されました。のちにこの3温泉は丸子温泉郷と呼ばれるようになり、現在も湯治文化が継承されています。
鉄道を利用してのアクセスは、北陸新幹線およびしなの鉄道の上田駅から千曲バス「鹿教湯温泉」行きに乗車し、約55分で「宮沢」バス停に到着します。バス停から霊泉寺温泉までは徒歩で約25分ほどかかりますが、近くの看板には有線電話と旅館の連絡先が表示されており、宿泊客は送迎を依頼することも可能です。
車で訪れる場合は、上信越自動車道「東部湯の丸インターチェンジ」を降りてから、約40分程度で到着します。細い山道が続く区間もありますので、運転には十分注意が必要ですが、途中には信州の美しい山並みや田園風景を楽しめる絶景も広がっています。