樽滝は、長野県下高井郡木島平村に位置し、豊かな自然の中にたたずむ美しい滝です。木島平村を流れる樽川の上流部に懸かるこの滝は、大小二つの滝「雄滝(おだき)」と「雌滝(めだき)」、そして年に限られた時季にだけ現れる「幻の滝」から構成されており、それぞれが異なる表情を持っています。
樽滝は、長野県木島平村の国道403号線と長野県道451号七曲西原線が交わる付近に位置しています。近くには玉滝不動尊という神社があり、滝とともに訪れる人々に静かな癒やしを提供しています。
雄滝(おだき、または男滝・雄樽滝)は、樽滝を代表する滝であり、神社のすぐ下を流れ落ちる樽川がそのまま滝となっています。その落差は約23メートル、幅は5メートルにも及び、迫力ある水流が岩肌を叩きながら流れ落ちる様子は圧巻です。
滝の上には橋が架かっており、国道側から神社へ向かうための通路として利用されています。この橋の上から見下ろす雄滝の姿は、訪れる人々に大自然の力強さを感じさせてくれます。
雌滝(めだき、または女滝・雌樽滝)は、雄滝から少し下流に位置し、旧滝見橋の真下に懸かる滝です。高さは約5メートル、幅も5メートルで、広く美しい滝壺を持ち、その穏やかな流れが静けさと癒しを演出します。
この雌滝には、古くから「大蛇が棲む」という伝承があり、その神秘的な雰囲気が訪れる人々を魅了しています。
そして樽滝でもっとも幻想的な存在が、毎年5月8日と10月中旬の紅葉の時期にだけ現れる「幻の滝」です。この滝は、高さ50メートルにも及び、国道から見て樽川の対岸にそびえる高さ80メートルの岩壁に出現します。
この幻の滝はもともと自然の滝ではなく、1923年に中部電力の樽川発電所に水を送る導水路の途中から漏れ出した水が、偶然にも滝となって現れたものでした。しかし、1984年に別の導水路が開通したことで一度は姿を消しました。
地元の人々や写真愛好家の要望により、1987年からは年2回の限定で放水されるようになり、再び「幻の滝」が姿を現すようになりました。毎年5月8日には、遠方からこの美しい滝を目当てに多くの観光客が訪れ、その神秘的な姿に魅了されます。中には「幻の滝を見ると幸せになれる」と言われ、恋人同士で訪れる方も多いそうです。
地元には、夕方に雄滝に近づくと滝壺に引きずり込まれてしまうという不思議な言い伝えがあります。「雄樽の大貝」という名で知られ、滝壺に棲む謎の存在が訪問者を引き込むと信じられていました。
雌滝に棲むとされる大蛇の伝説も有名です。かつては飯山市の柏尾という場所にある滝壺を住処としていた大蛇が、年月とともに体が大きくなり、狭く感じるようになったため、夢に現れた僧侶に「雌滝へ引っ越したい」と願い出ました。
僧侶は村人とともに馬8頭を用意し、大蛇を雌滝へと運びました。それ以降、大蛇は雌滝の主として棲むようになり、柏尾に水不足が生じると、雌滝で雨乞いをすることで雨が降るようになったと伝えられています。
樽滝へは、上信越自動車道・豊田飯山インターチェンジから車で約20分で到着します。途中にはのどかな山間の風景が広がり、ドライブそのものも楽しめます。
公共交通機関を利用する場合は、JR飯山線・飯山駅からタクシーで20分程度です。タクシーを利用する際は、事前に予約をしておくと安心です。
樽滝は、自然の力と人々の知恵、そして伝説が織りなす魅力あふれる観光スポットです。三本の滝それぞれが異なる個性を持ち、特に「幻の滝」は一見の価値があります。春の新緑、秋の紅葉、そして神秘的な放水によって現れる幻の滝の姿は、訪れる人々に深い感動を与えることでしょう。
長野県木島平村を訪れる際は、ぜひこの神秘の滝「樽滝」を訪れてみてください。自然と伝説が共演するこの地は、きっと心に残る思い出を与えてくれるはずです。