地獄谷温泉は、長野県下高井郡山ノ内町にある、湯田中渋温泉郷の一角に位置する秘湯です。深い山あいに流れる横湯川の渓谷沿いに湧き出すこの温泉は、厳しい自然環境に囲まれた中で、人と動物が共に過ごすユニークな場所として知られています。
地獄谷温泉の泉質は、塩含有石膏性苦泉と呼ばれ、体の芯から温まる独特な効能を持っています。この温泉地には、「後楽館」という一軒宿があり、日本秘湯を守る会にも加盟している由緒ある旅館です。後楽館では加水ありの源泉かけ流しの内湯が4つ、さらに混浴の露天風呂が2つ用意されており、日本温泉遺産を守る会から「温泉遺産の源泉かけ流し風呂」としても認定されています。
この後楽館の露天風呂には、冬になると野生のニホンザルが客とともに入浴する姿が見られることでも有名です。特に雪深い季節には、その光景が「日本らしい冬の風物詩」として多くの観光客の心を捉えています。
地獄谷温泉の歴史は古く、渋の地獄谷噴泉という国の天然記念物にも指定されている間欠泉が近くにあり、噴出する熱水と蒸気が、この地を「地獄」と恐れられる所以でもありました。また、後楽館の一室は、児童文学『龍の子太郎』の執筆に使用されたことで知られ、文化的な価値も備えています。
鉄道をご利用の場合:
JR長野駅から長電バス「急行 志賀高原線」で約40分、「上林温泉口」下車後、徒歩30分。
または長野電鉄湯田中駅より長電バスで10分「上林温泉」下車、徒歩30分。
お車の場合:
上信越自動車道「信州中野IC」より国道292号線を経由し、沓野・渋ICから「地獄谷駐車場」まで。そこから徒歩10分。ただし冬季は駐車場が閉鎖されるため、上林温泉からの徒歩ルート(30分)が推奨されます。
地獄谷野猿公苑(じごくだにやえんこうえん)は、1964年に開苑されたニホンザルの観察施設で、地獄谷温泉の最奥に位置します。この公苑では、野生のニホンザルが自然な姿のまま温泉に浸かる様子が見られることで、国内外の観光客に人気を博しています。
開苑の背景には、戦後の森林伐採によって生息地を失ったサルたちが里に下りてくるようになり、農作物への被害が深刻化したことがありました。そうした状況を見た初代園長の原荘悟氏が、サルと人との共存を目指し、サルを駆除せずに餌付けによって農業被害を抑えることを提案。約3年の歳月をかけて、野生のサルたちを人に慣らし、今のような野猿公苑の形を築き上げました。
標高850mの地にあるこの公苑では、冬場には1mを超える積雪があり、最低気温は-10℃以下にもなる厳しい気候が特徴です。そうした寒さを避けるため、サルたちは露天風呂に入るようになり、今ではその姿が「スノーモンキー」として世界的な注目を集めています。入浴しているのは12月から3月頃までが中心で、春になると温かさとともに入浴も減っていきます。
このユニークな光景は、『TIME』誌などの国際的なメディアでもたびたび取り上げられており、観光客の約2〜4割は日本国外からの来訪者です。特にスキー観光で訪れるオーストラリアや欧米からの観光客に人気で、「日本で見たい観光地ランキング」の上位にも入るほどです。
1998年の長野オリンピックの際には、会場近くという立地もあり、世界中のメディアに取り上げられるようになりました。最近では、シンガポールやタイなどの東南アジア圏からの観光客も増加傾向にあります。
1964年、後楽館の露天風呂に子ザルが好奇心で入浴したのをきっかけに、大人のサルもそれに続いて温泉に入るようになりました。その後、衛生管理の観点からサル専用の露天風呂が整備されました。
この露天風呂は縦4m・横10mほどの広さがあり、現在では50〜60頭のニホンザルが冬季に入浴している様子が観察できます。なお、入浴の目的は清潔のためではなく、寒さをしのぐためと考えられています。
地獄谷温泉と地獄谷野猿公苑は、自然と動物と人との共存を感じることができる貴重な観光地です。冬の雪景色とともに見るニホンザルの入浴風景は、日本ならではの風情をたたえ、海外からの観光客にも深い印象を与えています。アクセスには少々時間がかかりますが、それだけの価値がある魅力的なスポットです。ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。