発哺温泉は、長野県下高井郡山ノ内町に位置する、歴史と自然に包まれた魅力的な温泉地です。志賀高原の一角にあり、標高1,600メートルという高地に位置することから、周囲には北信五岳や北アルプスの雄大な景色が広がっています。江戸時代より続く歴史を有し、かつては湯治場としても賑わいを見せていました。
発哺温泉は、志賀高原で最も古くから知られている温泉であり、かつては平穏温泉(現在の湯田中渋温泉郷)の一部としても扱われていた時期がありました。現在ではスキー観光が盛んなエリアに変貌を遂げていますが、その歴史の深さは訪れる人々を魅了し続けています。
発哺温泉では、以下のような泉質の温泉を楽しむことができます。
泉質の特徴としては、pHは5.4で、無色透明ながらも硫黄の風味と硫化水素の香りが漂います。源泉の温度は約50℃で、岩盤から噴出する高温の蒸気を専用の釜で温水化し、沢から湧き出る水と混合して使用するという、非常に珍しい「蒸気温泉」方式を採用しています。
現在の発哺温泉周辺は、伝統的な温泉街というよりも、スキー場の中腹に建ち並ぶスキーホテル街として発展しています。かつては湯治場として栄えていましたが、その面影はほとんど残っていません。
1998年の長野オリンピックでは、アルペンスキー大回転の会場として、東館山(ひがしだてやま)が使用され、発哺温泉はその中腹に位置しています。そのため、スキーシーズンには多くの観光客が訪れ、冬のアクティビティと温泉を同時に楽しむことができます。
発哺温泉の開湯は1841年(天保12年)に遡ります。この年、関新作が「天狗の湯」を発見したことが起源とされています。また、明治期の思想家である佐久間象山の日記にもこの温泉が記されており、歴史的にも価値ある場所であることが分かります。
「ほっぽ」という名前の由来には諸説あります。一説には、蒸気が「ポッポ・ポッポ」と音を立てて噴き出す様子から名付けられたとも、また登ってくるうちに体が火照って「ホッポ・ホッポ」になることからとする説もあります。
この地にはかつて、多くの文人墨客が滞在しました。作家の三好達治は長期にわたり滞在し、発哺温泉を「眺望が素晴らしい。まことに世外の逸興である」と賞賛しています。かつて営業していた「天狗の湯」や「薬師の湯」などの名湯は、残念ながら現在は休業・廃業となっています。
現在でも日帰り入浴が可能な施設として、以下のような宿泊施設があります。
これらの宿はいずれも豊富な湯量を誇り、源泉かけ流しの湯にゆったりと浸かることができます。スキーやハイキングの後に疲れを癒すには最適な場所です。
かつては志賀高原ロープウェイ(発哺温泉駅)も利用できましたが、2011年(平成23年)5月25日をもって運行を休止し、そのまま廃止となりました。
発哺温泉は、雄大な自然、歴史的な背景、そして豊かな温泉資源に恵まれた、まさに隠れた名湯といえる存在です。スキーや高原ハイキングと組み合わせて楽しめるこの温泉地は、喧騒を離れた静寂なひとときを求める方にとって理想的な旅先となることでしょう。