黒姫山は、長野県上水内郡信濃町に位置する標高2,053メートルの美しい成層火山であり、その整った山容から「信濃富士」とも称され、地元の人々に親しまれています。斑尾山、妙高山、戸隠山、飯縄山とともに「北信五岳」の一つとして知られています。
本山は妙高火山群に属する複式火山で、山頂には二等三角点とともに、黒姫弁財天を祀る小祠があります。火口原には溶岩が点在し、チシマザサやダケカンバ、コメツガ、ワタスゲなどの高山植物が豊かに分布しています。
標高的には森林限界には達していないものの、土壌の栄養分が乏しく、高山性の植生が見られます。特に火口原に広がる湿原には、七ツ池や峰ノ大池といった池塘が点在しており、「黒姫山湖沼・湿原群」として「日本の重要湿地500」にも選ばれています。
外輪山周辺にはハイマツやキバナシャクナゲが分布し、江戸時代から竹細工の素材として利用されてきたチシマザサも多く見られます。
黒姫火山の形成には3つの火山活動期と休止期があり、最初の活動は約25万年前とされます。以降、15万年前から12万年前にかけて再び活動し、最後の活動は約4万年前で、中央火口丘である御巣鷹山(小黒姫山、標高2,046メートル)が形成されました。
現在の最高点(2,053メートル)は、中央火口丘の東南東に位置する外輪山上にあります。火口原との間には広がる高原状の地形があり、美しい湿地帯を形成しています。
古来より黒姫山は信仰の対象となっており、「黒姫伝説」と呼ばれる悲恋の物語が語り継がれています。この伝説は山名の由来ともされ、地域の文化や民間信仰に大きな影響を与えています。
また、児雷也という忍術の達人が黒姫山に住んでいたという説もあり、隣の妙高山に住む仙人から術を学んだという伝承も残されています。さらに、野尻湖近くの熊坂という集落には、平安末期の盗賊・熊坂長範にまつわる伝説もあります。
黒姫山は戸隠連峰の東に位置し、関川を挟んで妙高山と向かい合う独立峰です。東には野尻湖が広がり、さらに斑尾山が望める位置にあります。西には佐渡山(標高1,827.6メートル)が近接しています。
山域は1956年に妙高戸隠連山国立公園の特別地域に指定され、外輪山内側は特別保護地区とされています。特に西山腹には大ダルミ湿原が存在し、自然環境の保全が図られています。
黒姫山は古くから登山の対象とされており、展望の良さと自然の豊かさから、多くの登山愛好者に親しまれています。『日本二百名山』や『信州ふるさと120山』、さらに『新・花の百名山』にも選定されており、その人気の高さがうかがえます。
登山シーズンは例年6月中旬の開山祭から10月中旬の閉山祭までで、自然とともに登山文化も色濃く残されています。
黒姫高原から巣鷹林道を経由し、姫見台、越見尾根を登って山頂に至るルートです。
種池登山口(長野県道36号)から種池、古池、大ダルミを経て外輪山に合流し、峰ノ大池分岐を経由して山頂に至ります。
長野県道36号から大橋林道を通り、大ダルミを経由して火口原にある池塘群(峰ノ大池、七ツ池)を巡るルートです。
長水から外輪山に合流して山頂を目指すルートで、比較的短時間で登頂可能です。
黒姫山の東山麓に広がる黒姫高原は、四季折々の花々が咲き誇る美しい観光地です。夏にはコスモスが咲き誇り、秋には紅葉、冬には黒姫高原スノーパークとしてスキーやスノーボードを楽しむ人々でにぎわいます。
また、教育的な取り組みとして、「ラボ・パーティ」が運営する林間学校「ラボランドくろひめ」も立地し、子どもたちに自然と触れ合う貴重な体験の場を提供しています。
最寄りの駅はしなの鉄道・黒姫駅で、黒姫山の東山麓から約6.3 kmに位置します。黒姫駅のある信濃町柏原は、俳人・小林一茶の出身地としても知られ、歴史と文化が融合するエリアです。
上信越自動車道の信濃町インターチェンジからは西に約5.7 km、また東山麓には国道18号(北国街道)が通り、南山麓には長野県道36号信濃信州新線があります。北側山腹には巣鷹林道が整備されています。
自然、伝承、登山、観光、そして信仰と、多面的な魅力を持つ黒姫山は、長野県を代表する名峰として訪れる人々に感動を与えています。季節ごとに異なる表情を見せるその山容を、ぜひ一度ご自身の目でご体感ください。