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南照寺(川東善光寺)

(なんしょうじ かわひがし ぜんこうじ)

信州中野に息づく善光寺信仰の寺院

南照寺は、長野県中野市大門に位置する、真言宗智山派に属する由緒ある仏教寺院です。山号は「高井山(たかいやま)」、通称は「川東善光寺」と呼ばれ、古くから地域の人々の信仰を集めてきました。長野市の名刹・善光寺と並び称される存在であり、その由緒や建築、仏像などに善光寺との共通点が数多く見られます。

「川東善光寺」と称される理由

南照寺は、善光寺のある長野市の西側から、千曲川を越えた東側にあることから、「川東善光寺」という別名で親しまれています。その本堂は撞木(しゅもく)造りと呼ばれる建築様式で、これは善光寺の本堂と同様の形式です。また、本尊である阿弥陀三尊像や、善光寺を開いたとされる本田善光とその家族の像も堂内に安置されており、善光寺との深いつながりが感じられます。

本尊と伝承 ― 三国伝来の秘仏「阿弥陀三尊」

金銅製の阿弥陀三尊像

南照寺の本尊は、金銅製の阿弥陀三尊像で、中央に阿弥陀如来、脇侍に観音菩薩と勢至菩薩を従える形式です。この三尊像は、「善光寺式阿弥陀三尊」と呼ばれ、大和時代に大陸から伝わったとされる秘仏であり、非常に貴重な文化遺産とされています。

信仰の広がりと出開帳

江戸時代には、この阿弥陀三尊像を江戸や名古屋などの大都市に出開帳し、多くの参拝者を集めるほど、南照寺の信仰は広がっていきました。特に1711年(正徳元年)に江戸・自性院で行われた出開帳では、善光寺側と訴訟になるほど注目を集めました。幕府の寺社奉行は、「川東善光寺の本尊は善光寺の写しではない」という裁許を下し、南照寺の独自性を公式に認めた形となっています。

南照寺の歴史 ― 幾度の災難と再興の物語

創建から中世まで

南照寺の起源は、平安時代末期の1156年(保元元年)にまで遡ります。この年に、高野山の高僧・大徳観中和尚がこの地に草庵を開き、阿弥陀堂を建立したのが始まりとされています。その後、1350年(観応元年)には本堂および諸舎が再建され、塔頭として勢至院・観音院・地蔵院の三院が整えられました。

天災と流出、そして復興

1578年(天正6年)、南照寺は夜間瀬川の大洪水により壊滅的な被害を受け、本堂をはじめとする建造物のほとんどが流出してしまいました。しかし、当時の住僧・宥寛(ゆうかん)は本尊である阿弥陀如来を命懸けで守り抜き、仮小屋に納めて信仰を絶やさぬよう努めました。

江戸時代の再興と南照寺の確立

1652年(承応元年)には、中興の祖・頼尊和尚が、開祖である観中和尚の高徳を慕い、荒廃していた南照寺の地に入り再興を志しました。中野陣屋代官・天羽七右衛門景慶の援助を受け、如来堂を再建して本尊を安置し、寺号を正式に「南照寺」と称するに至りました。

著名人と南照寺

俳人・小林一茶との関わり

江戸後期の俳人・小林一茶も南照寺とゆかりがあります。一茶は、1814年(文化11年)3月11日に南照寺で行われた仏の御開帳に立ち会っており、その日の出来事を日記に記しています。「午前中は晴れ、午後から雨。六川村に入り五郎邸で宿泊、中野善光寺で仏の御開帳、大仏があった」という記録からも、当時の南照寺の影響力の大きさが窺えます。

板倉甲斐守重寛による石塔の寄進

さらに、1688年(元禄元年)には、幕府の要職を務めた板倉甲斐守重寛が、境内に九層の石塔を寄進しました。この石塔の内部には、花山天皇の和歌「みすずかる信濃の奥の松川に清き仏の御法ながして」の碑が安置されています。

南照寺の境内と文化財

堂宇の配置

南照寺の境内には、本堂のほかに、庫裡(くり)や、前述の勢至院・観音院・地蔵院などが点在しており、信仰と歴史の重みを感じさせます。また、前述の九層の石塔も見どころのひとつです。

文化財 ― 北斗曼陀羅図

南照寺には、江戸時代の元禄年間に作成された「北斗曼陀羅図」が寺宝として伝えられており、貴重な仏教美術の資料として大切に保管されています。

現在の南照寺

近代以降の住職

再建後の南照寺では、歴代住職によって信仰と寺の維持が続けられてきました。近年では、第二十一世・鈴木栄昇師がその任にあたり、地域に根ざした活動や文化財の保護に尽力されています。

中野市の文化財・観光としての役割

今日の南照寺は、中野市の歴史と文化を象徴する寺院の一つとして、地元の人々だけでなく、観光客にも親しまれています。善光寺信仰にゆかりあるもう一つの聖地として、訪れる人々に深い感銘を与えています。

まとめ

南照寺は、単なる地方寺院にとどまらず、長野県内外の信仰の中心の一つとして、その名を歴史に刻んできました。善光寺とのつながり、本尊としての阿弥陀三尊、災害を乗り越えてきた復興の歩み、そして地域に根差した文化遺産としての価値。この地に息づく信仰と歴史の物語を、ぜひ現地で感じてみてください。

Information

名称
南照寺(川東善光寺)
(なんしょうじ かわひがし ぜんこうじ)

野沢温泉・志賀高原

長野県