長野県 > 長野市・戸隠・小布施 > 水上布奈山神社

水上布奈山神社

(みずかみ ふなやま じんじゃ)

千曲川のほとりに佇む歴史と彫刻美の名社

水上布奈山神社は、長野県千曲市戸倉に鎮座する由緒ある神社です。千曲川の流れを望むこの地は、かつて北国街道の宿場町「下戸倉宿」として栄え、多くの旅人や善光寺参りの人々が行き交いました。そうした歴史の舞台にあって、地域の鎮守として人々の信仰を集め続けてきたのが本神社です。

創建と御祭神

神社の創建時期は明らかではありませんが、江戸初期の1603年(慶長8年)、北国街道の整備により下戸倉宿が設けられたことを契機に、諏訪大社から建御名方神(たけみなかたのかみ)を勧請し、「諏訪社」として創建されたと伝えられています。建御名方神は武勇の神、農耕の神、水の神として広く信仰されてきた神であり、千曲川流域の人々にとって大切な守護神でした。

しかし、千曲川はたびたび氾濫を繰り返し、社殿は幾度となく洪水の被害を受けました。地域の人々はそのたびに再建を重ね、信仰の灯を守り続けてきました。

現在の本殿の建立

現在の本殿は、天明5年(1785年)より下戸倉宿の人々が総力を結集して再建に取り組み、5年の歳月をかけて寛政元年(1789年)に完成しました。設計・施工を手がけたのは、諏訪宮大工大隅流の名匠柴宮長左衛門矩重(しばみやちょうざえもんかねしげ)であり、その代表作として高く評価されています。

国の重要文化財に指定された本殿

県内随一の規模を誇る一間社流造

本殿は一間社流造(いっけんしゃながれづくり)という様式で建てられており、その規模は同形式の建物として県内随一といわれます。流造特有の優美な屋根の反りと、均整のとれた構造美が訪れる人の目を引きます。

その歴史的・芸術的価値が認められ、1965年(昭和40年)に旧戸倉町の有形文化財に登録、さらに1988年(昭和63年)には国の重要文化財に指定されました。

圧巻の彫刻群

水上布奈山神社の最大の見どころは、本殿を取り囲む豪壮かつ精緻な彫刻です。柴宮長左衛門矩重による彫刻は、当時の建築装飾の粋を集めたもので、その主題の豊富さと躍動感あふれる表現は目を見張るものがあります。

代表的な作品としては、

「蘇鉄に兎」 ― 繊細な植物表現と愛らしい兎の姿が調和した作品
「波に亀」 ― 荒波の中に悠然と浮かぶ亀の力強さを描写
「上り竜」「下り竜」 ― 天へ昇る龍と地へ降りる龍の対比が見事

などがあり、いずれも立体的で迫力に満ちた造形美を誇ります。彫刻の一つひとつに物語性があり、当時の職人技術の高さを今に伝えています。

「水上布奈山神社」への改称

もとは諏訪社として崇敬されていましたが、天保13年(1835年)、京都の吉田家より神社号の允可を受け、「水上布奈山神社」と改称しました。これにより、正式な神社としての格式が整えられ、地域の総鎮守としての地位を確立しました。

飯盛女の献燈籠 ― 宿場町の歴史を物語る文化財

52名の名が刻まれた燈籠

境内には、1839年(天保10年)7月に奉納された「飯盛女の献燈籠」があります。これは下戸倉宿で働いていた飯盛女52名と旅籠屋主人によって奉納されたもので、高さ約159cm、最大幅75cmの堂々とした石燈籠です。

台座には52名それぞれの名前が刻まれており、当時の宿場町の実情や女性たちの祈りの心を今に伝えています。善光寺参りで賑わう宿場で働く中、彼女たちが自身の幸せや平穏を願って捧げた一灯といえるでしょう。

この燈籠は千曲市指定有形文化財に指定され、貴重な歴史資料として大切に保存されています。

御柱祭 ― 7年ごとの大祭

諏訪大社にならい、水上布奈山神社でも御柱祭(おんばしらさい)が行われます。数え年で7年ごと、実際には申年と寅年の4月中旬に開催され、地域を挙げて盛大に執り行われます。

勇壮な御柱の曳行は、地域の結束と伝統文化の継承を象徴する重要な行事であり、平成12年には千曲市無形民俗文化財に指定されました。

境内の名木「クヌギ」

境内には、かつて群生していたクヌギ林の名残である大木が今も立っています。大正13年の記録によれば、当時は目通り周囲1.82メートル以上の大木が10本あり、最大のものは約2.25メートルにも及んだと記されています。

クヌギは古くから薪や炭の材料として人々の暮らしを支え、「ツルバミ」とも呼ばれてきました。この木はどんぐりを採取し、近隣の山々へ植樹する母樹ともなったと伝えられ、地域の生活文化と深く結びついた存在です。

アクセス

所在地:長野県千曲市戸倉
交通:しなの鉄道「戸倉駅」より徒歩約6分

まとめ

水上布奈山神社は、北国街道の歴史、千曲川の自然、そして諏訪信仰の伝統を今に伝える貴重な神社です。国の重要文化財である本殿の見事な彫刻群、宿場町の歴史を物語る飯盛女の献燈籠、そして勇壮な御柱祭など、見どころは多岐にわたります。

千曲市を訪れた際には、ぜひゆっくりと境内を巡り、歴史と芸術、そして地域の人々の祈りが息づくこの名社の魅力を感じてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
水上布奈山神社
(みずかみ ふなやま じんじゃ)

長野市・戸隠・小布施

長野県