長野のセルリー<セロリ>の生産量は、ダントツで全国一位(平成21年農林水産統計)。主に夏場に生産されている。セルリーと言えば独特の香りが特徴的だが、この香りが苦手だという人も多い。そのため、JA諏訪信州では、特有の香りを抑えた“諏訪3号”という品種も栽培している。カリウムや食物繊維も多く含まれているセルリーのおいしさを楽しむには、マヨネーズや、少し砂糖を加えたマヨネーズ味噌をつけて生で味わうのが一番だが、キムチにしたり、葉の部分は甘辛く炒めたりするのもおすすめだ。
旬 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
セロリはセリ科の植物で、一年草または越年草(二年草)です。ヨーロッパから地中海沿岸が原産地とされており、改良品種が栽培されています。セロリは葉、茎、実の部分が食用とされ、特有の強い香りがあります。
和名である「オランダミツバ(阿蘭陀三葉)」は、西洋の品種がオランダ船で渡来したことに由来しています。一般的には「セロリ」と呼ばれていますが、これは英語の「Celery」に由来する外来語です。その語源は、ギリシャ語やラテン語で「パセリ」を意味する「セリノン (selinon)」から派生し、イタリア語の「セルラロ (serano)」(またはロンバルディア方言の「セルラリ (sereli)」)を経て、フランス語の「セルリ (sereri)」から英語名の「セロリ」に変化したとされています。ただし、日本でも農業関連者を含む多くの人々が「セルリー」と呼ぶことが一般的です。
セロリは緑、淡緑、黄白などの色があり、淡色野菜に分類されます。茎の高さは約30 - 75 cmで、6 - 9月ごろには白い小花を球状に咲かせます。全体的に、フタリド類とテルペン類の化合物に由来する特有の芳香を持っています。セロリにはβ-カロテン、ビタミンB1・B2などのビタミン類、カルシウム、鉄などのミネラル、そして豊富な食物繊維が含まれています。
セロリの品種
セロリには、主に以下のような品種があります。
コーネル: クセが少なく、日本で一般的に流通している品種です。茎は黄緑白色で、長さは約40 cmほどになります。株が大きいため、茎を1本ずつにして単品で販売されることが多いです。
グリーンセロリ: 葉茎全体が緑色で、強い香りが特徴の品種です。密植して小型に作られ、株のまま販売されることがあります。かつて日本に導入されましたが、その強いクセからあまり好まれませんでした。
トップセラー: 淡緑色のセロリで、やや立ち性の株で幅広い葉柄が特徴です。生育が旺盛で栽培しやすく、家庭菜園にも適しています。
ホワイトセロリ: 水耕栽培で作られる品種で、茎が細長くミツバのような形状をしています。通常のセロリよりも香りは控えめです。
ミニホワイト: 早生専用のホワイトセロリで、ミニセロリとも呼ばれます。香りが強く、スープやサラダの彩りに使われることがあります。
キンサイ(芹菜): 英名では「チャイニーズ・セロリ」とも呼ばれるセロリの変種です。東洋在来種であり、中国野菜としても知られています。
セロリの利用方法
セロリは独特の香りと食感を持つ淡色野菜で、さまざまな料理に利用されます。その利用方法について説明します。
食用
セロリは葉と葉柄を食用にします。冬から2月にかけてが旬で、葉は鮮やかな緑色でしっかりとしており、茎は太くて厚みがあり、下部の根元が太くて丸みがあるものが良品とされています。
葉や茎は生食でサラダなどに使われる他、漬物や佃煮、スープ、シチューなどの料理で香味野菜としても広く活用されます。また、キンサイは炒め物にもよく利用されます。葉と茎はさまざまな料理に使われるほか、茎の外側の固い筋部分は取り除いて、煮込み料理や炒め物、サラダなどで使われます。
セロリの特有な芳香成分であるアピオールには、肉やレバーの臭みを消す効果があります。さらに、香りの強い成分は口内の味覚神経を刺激して食欲を増進させるともいわれています。セロリの葉を使用したブーケガルニはスープや煮込み料理の香り付けに用いられ、魚介のマリネなどにも活用されます。
また、セロリの実から抽出した精油は、香辛料や薬用としても使用されます。セロリシードと呼ばれるこの精油はピクルスやスープに利用され、セロリシードの粉末を食塩と混ぜたセロリソルトも香辛料として使用されます。
セロリは保存する際には、茎についたままの葉が水分を吸い上げてしまうことがあるため、茎と葉を切り離して乾燥を防ぐために冷蔵庫で保存することがおすすめです。
栄養価
セロリは茎よりも葉にβ-カロテン、ビタミンB1・B2・C・E、食物繊維が多く含まれており、特にβ-カロテンは茎の2倍分も含んでいます。また、カリウムがやや多く、カルシウムとリンはほぼ1対1の割合で含まれています。独特の香りはテルペン類に由来しており、特有の苦味成分には食欲不振や胃もたれの防止効果が期待されています。
薬用
セロリの薬用部位は茎と葉で、精油やブチルフィサリド、ネオセリディライド、フラボノイドなどの成分が含まれています。セロリの香り成分であるアピインやセリニンには、食欲増進や神経の鎮静、血圧上昇の抑制などの効果があるとされています。
セロリは胃潰瘍の予防と緩和、神経系の調整にも役立ちます。漢方では利尿作用や浄血作用、血圧降下、鎮静、痙攣の緩和などが認められており、中国では「旱芹(カンキン)」と呼ばれ、高血圧症やめまい、頭痛、顔面紅潮、血尿などに対して利用されています。
ビタミンUはセロリに多く含まれており、胃や十二指腸の粘膜修復を助ける効果があります。同様に、ビタミンB1・B2も多く含まれており、エネルギー代謝をサポートし、神経系の正常な働きを維持する効果があります。
セロリの葉を天日干ししたり、入浴料として使用することで体を温める効果もあります。精油がお湯に溶けて肌を軽く刺激し、血液循環を促進するため、冷え性や肩こり、疲労回復に役立つと言われています。