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妻科神社

(つましな じんじゃ)

妻科神社は、長野県長野市南長野の静かな住宅地に鎮座する、由緒ある神社です。古くから「善光寺三鎮守(善光寺三社)」の一社として、また「善光寺七社」にも数えられ、善光寺との深い結びつきを持つ存在として知られています。格式高い式内社であり、近代の社格制度では旧県社に位置づけられています。

妻科神社の立地と周辺環境

善光寺と長野県庁にほど近い静寂の社

妻科神社は、善光寺の南西、長野県庁の北側という官公庁街にほど近い立地にありながら、一歩奥に入ると落ち着いた住宅地の中に静かにたたずんでいます。神社の南側は、住宅地として12年連続(2011年現在)で長野県内最高の地価を記録しており、不動産関連の報道などでは「妻科神社南」という表現でよく登場します。

御祭神とその由来

主祭神:八坂刀売命(やさかとめのみこと)

妻科神社の主祭神は、諏訪大社と同じく「建御名方神(たけみなかたのかみ)」の妃神である八坂刀売命です。神話において夫婦神として描かれるお二人の信仰は、善光寺周辺の武井神社・湯福神社・水内大社とも共通しており、いずれも諏訪系の神社とされます。

相殿神:建御名方命・彦神別命

相殿には建御名方命、そして彦神別命が祀られています。ただしこの二柱については、実は夫神「建御名方富命彦神別神(たけみなかたとみのみことひこのかみわけのかみ)」を二神に分けて祀った結果とする説もあります。また、彦神別命を建御名方神の御子神「建御名方彦神別命」とする解釈もあり、神名の伝承と解釈は複数存在します。

創建と神社の由緒

「妻科」の名にこめられた神話的背景

創建時期は不詳ですが、社名「妻科」は、建御名方神の后神を祀る神社であることを示していると伝えられています。『日本書紀』持統天皇5年(691年)の記録にある「水内神」は、妻科神社および水内大社のことを指すという説もあります。

伝承では、建御名方神が建御雷神との戦いに敗れて出雲から信濃へと北上し、千曲川を遡って善光寺のある横山(現在の長野市)へ到達した際、追撃してきた建御雷神と再び対峙。その際、妻神が戦火を避けて現在の地に身をひそめたことから、この地が「妻科」と呼ばれるようになったとされます。

さらに、建御名方神はこの地で再び敗れて負傷し、上田市にある生島足島神社に逃れ、療養した後に現在の諏訪の地に至ったと伝えられています。

文献上の記録

文献に初めて登場するのは、貞観2年(860年)『日本三代実録』の記述であり、「妻科地神」として正六位上から従五位下の神階を授けられたことが記されています。これは妻科神社が地主神として古くから信仰されていた証拠と考えられています。

古墳と地名に見る歴史的背景

かつて妻科神社の本殿裏には「御宝塚」と呼ばれる複数の古墳があったと伝えられ、それが現在の「宝塚通り」という地名の由来ともなっています。こうした古墳祭祀に端を発する神社である可能性も示唆されています。また、「科」の字は信濃地方でよく見られ、「更科」「埴科」「保科」「仁科」などに共通して用いられる点も興味深い要素です。

さらに、周辺の長野県庁周辺では古代の集落跡である県町遺跡が発見されており、妻科神社との関係性も指摘されています。神社の境内からは黒曜石の鏃が見つかることもあり、古代からの人々の営みを感じさせます。

歴史的変遷と神社の格式

文献と社格の推移

平安時代中期の『延喜式神名帳』には、「信濃国水内郡 妻科神社」として式内社に列しています。古くから武井神社・湯福神社とともに「善光寺三鎮守」とされ、地域信仰の中心的存在でした。

江戸時代には松代藩から2石の社領が寄進され、地域の崇敬を集めていました。明治6年(1873年)には近代社格制度により郷社に列し、昭和6年(1931年)には県社へ昇格しました。

境内の様子と建造物

社殿の構造

妻科神社の本殿は一間社流造という構造で、拝殿の背後の段丘上に厳かに建てられています。また、祝詞殿・神饌舎・社務所などの施設も整備されており、現在も地域の信仰の中心として多くの参拝者を迎えています。

摂末社

境内には以下の摂末社が祀られており、それぞれの神社にも厚い信仰が寄せられています。

祭事と伝統行事

御柱祭の開催

妻科神社では、武井神社、湯福神社、水内大社と持ち回りで、寅年と申年に一度、諏訪大社の伝統に倣った御柱祭が開催されます。境内には実際に御柱が立てられ、地域の人々の熱気とともに、古来からの伝統が今に受け継がれています。

アクセス情報

所在地と交通手段

所在地:長野県長野市大字南長野字本郷219-1

アクセス:JR東日本・長野電鉄「長野駅」より、市街地循環バス「ぐるりん号(C)」に乗車し、「議員会館前」バス停下車、徒歩数分。

まとめ:妻科神社の魅力

妻科神社は、神話の物語、古代の歴史、そして地域の生活と密接に結びついた、まさに長野市の心とも言える神社です。善光寺とあわせて訪れることで、信州の歴史と信仰の重層的な広がりを実感できるでしょう。静けさの中にも凛とした気配を感じさせるこの場所で、悠久の時を超えた祈りの世界に触れてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
妻科神社
(つましな じんじゃ)

長野市・戸隠・小布施

長野県