夜の池は、長野県小県郡長和町和田の野々入地区に位置する、山あいにひっそりと佇む静かな池です。この池は「一夜池(ひとよいけ)」「野々入の池(ののいりのいけ)」という別名でも知られ、地元の人々から長年親しまれてきました。標高990メートルという高地にあるこの池は、その名の通り一夜のうちに出現したと伝えられており、地元にはさまざまな言い伝えや伝説が残されています。
夜の池は、名勝・美ヶ原高原の東側山腹に広がる自然豊かな地域、長和町和田の野々入にあります。標高はおよそ990メートルで、面積は約0.9ヘクタール、周囲は約1キロメートルにも及びます。水深は最大で4メートルほどで、山からの湧水や沢の流れを受けて年間を通じて安定した水量を保っています。
夜の池の名称には、興味深い由来があります。地元の伝承によると、ある年の梅雨の夜に、池の頭山の中腹が大規模な地すべりを起こし、その跡地に一晩で水がたまって池ができたといわれています。この劇的な成り立ちから「夜の池」や「一夜池」と呼ばれるようになったのです。
池にはイワナなどの魚類も生息し、澄んだ水の中を静かに泳ぐ姿を見ることができます。また、この池の水は古くから農業用水として利用されてきました。1940年(昭和15年)には、さらなる食糧増産を目的とした改修工事が行われ、地域の暮らしを支える貴重な水源として整備されました。上水道の整備以前には、飲料水としても活用されていた歴史があります。
前述の通り、夜の池は地すべりによって突如出現したとされ、地元の人々の間では「一夜にして生まれた神秘の池」として語り継がれています。この出来事は長年にわたり話題となり、池を取り巻く土地や自然に対する敬意と畏怖の念を育んできました。
さらにこの池には、ユニークな伝説も残されています。江戸時代の文献『信濃国蓼科山略伝記』には、夜の池は河童によって一夜のうちに作られたと記されています。もともと河童は、雨境峠の街道沿いにある赤沼池に住み、道行く旅人を化かしたりするいたずらをしていたといいます。
しかし、ある日諏訪頼遠(すわよりとお)という侍がその河童を退治し、赤沼池を追われた河童は新たな住処を求め、長和町に現れました。そして、なんと一夜のうちに池を作り上げたとされるのがこの「夜の池」です。河童が去った赤沼池は、河童の魔力が失われたことで干上がり、現在は「女神湖」として整備されているのだとか。このような伝説は、池にまつわる神秘性をより深め、訪れる人々の興味をかき立てます。
夜の池の周辺は自然豊かな環境で、池のほとりを歩くだけでも心癒されるひとときを過ごすことができます。水面に浮かぶ小島、緩やかな水の流れ、山々に囲まれた静寂な空間が広がっており、四季折々の自然美を堪能することができます。
JR北陸新幹線・上田駅から路線バスを利用し、約88分で最寄りの「夜の池」バス停に到着します。バス停から池までは徒歩3分程度で、アクセスは比較的容易です。
長野自動車道・岡谷インターチェンジから約30キロメートル(約35分)、または上信越自動車道・東部湯の丸インターチェンジからは約33キロメートル(約45分)で到着可能です。普通車3台分の駐車場が整備されているため、マイカーでのアクセスにも対応しています。
長和町にある夜の池は、自然の力によって生まれたとされる静謐な池であり、地元に語り継がれる神話や伝説に彩られた特別な場所です。四季の移ろいと共に表情を変えるこの池は、観光客にとっても地元の人々にとっても癒しと学びを与えてくれます。
近年では、池周辺の自然散策や伝説にまつわる観光資源としても注目されており、静かな時間を求める方、歴史や自然に興味がある方には特におすすめです。都会の喧騒を離れ、心穏やかに過ごすには最適な場所といえるでしょう。