初島は、長野県諏訪市の中心に広がる諏訪湖に浮かぶ人工島です。1954年(昭和29年)4月、現在も毎年夏に開催されている「諏訪湖祭湖上花火大会」の打ち上げ拠点として建設されました。湖の東側、湖畔公園からおよそ250メートル沖に位置し、花火大会の夜には多くの人々がこの島を背景に美しい花火を楽しみます。建設当初は495平方メートルの広さでしたが、後の改修工事により660平方メートルまで拡張されました。
2007年には、NHK大河ドラマ「風林火山」の放送に合わせ、諏訪の名城高島城をモチーフにした「浮き城」が建てられました。この建築は島の新たなシンボルとして注目を集め、夜間にはライトアップが行われ、幻想的な雰囲気を演出しました。その後2008年7月には「浮き城」が上諏訪駅前ロータリーへ移設され、観光客を迎えるモニュメントとして再利用されています。
また、2007年12月から翌年2月にかけては「諏訪を彩る光の祭典」として、初島全体がイルミネーションに包まれるイベント「冬の花火」が開催されました。湖面に映る光のきらめきは訪れる人々を魅了し、冬の諏訪湖の新しい風物詩として親しまれました。
老朽化の進行に伴い、2008年度からは大規模な改修工事が始まりました。第一期工事では島の西側護岸を修復し、崩れていた石積みを再構築。さらに転落防止柵を設置し、来島者の安全を確保するとともに公園として整備が進められました。この工事により、島の面積は拡大し、より多くの人々が訪れることのできる観光スポットとして生まれ変わりました。
2012年には、完成当初から植えられていたヤナギの古木4本が老朽化により伐採されましたが、翌年以降の第二期工事では新たな植樹が検討され、自然と調和した美しい景観の復元が進められています。2013年度には東側護岸の修復も完了し、建設当時の丸い島の形状が見事に再現されました。
初島には小さな神社「初島神社」が鎮座しています。1954年の島完成時に建立され、花火大会の安全と諏訪湖の守護を祈願するために建てられました。御祭神は諏訪大明神(建御名方神)で、現在では子宝・安産の神としても信仰を集めています。
この神社の特徴的な行事が、諏訪地方で有名な御柱祭です。諏訪大社と同じく、初島神社でも御柱祭が行われ、御柱が湖上をボートで曳航されるという全国でも珍しい光景が見られます。湖面を渡る男衆の勇壮な姿は、訪れる人々の心を打ち、諏訪の伝統を象徴する祭事として高く評価されています。
初島神社の維持管理は、諏訪湖の関係団体で構成される初島奉賛会によって行われています。毎年、鳥居の注連縄の掛け替えや社殿の修繕が行われ、地域住民の手によってその姿が守られています。また、倒した古い御柱を利用して製作されるお守り「御渡り守り(みわたりもり)」は、諏訪湖畔のホテルや土産店などで販売され、訪れる人々に人気を集めています。
初島は、花火大会の打ち上げ場として誕生した人工島でありながら、時を経て信仰と文化が融合した象徴的な場所となりました。湖上に浮かぶ小さな島は、諏訪湖の風景に静かなアクセントを添え、四季を通じて多くの人々の心を惹きつけています。花火の夜も、雪の降る冬も、初島はいつも諏訪湖の中央で静かに人々を見守り続けています。