手長神社は、長野県諏訪市上諏訪の茶臼山に鎮座する神社です。旧社格は県社で、現在は神社本庁の別表神社に列せられています。古くから諏訪大社上社の末社として崇敬を集め、諏訪の人々の生活や信仰と深く結びついてきました。社殿は諏訪湖を見下ろす高台に位置し、上諏訪駅から徒歩約7分という便利な立地ながら、境内に一歩足を踏み入れると静謐な空気に包まれ、古社の風格を感じることができます。
手長神社の御祭神は手摩乳命(てなづちのみこと)で、「手長彦神」とも呼ばれます。日本神話においては、建御名方神の先祖である奇稲田姫の母神として登場する神であり、建御名方神に随従する神としても知られています。諏訪大社の神々がこの地に祀られる以前から信仰されていた古い神で、同じ諏訪市内には夫神である足摩乳命(あしなづちのみこと)を祀る足長神社が鎮座しており、両社は深い関係を持っています。
手長神社の創建年代は明確ではありませんが、境内近くには旧石器時代から古墳時代の複合遺跡である手長丘遺跡があり、また上方には茶臼山古墳群が点在していることから、古代より人々が居住し信仰を捧げてきた地であることがわかります。かつては「手長宮」「手長大明神」と称され、桑原郷の総鎮守として信仰されていました。
鎌倉時代、桑原郷が上桑原と下桑原に分かれた際、それぞれの地域の守護神として、上桑原には足長神社、下桑原には手長神社が鎮座するようになったと伝えられています。江戸時代には高島城の鬼門を守る位置にあることから、諏訪藩家中の総鎮守とされ、領主や武士、庶民からも篤く崇敬されました。現在の社殿は天明年間に名工立川和四郎富棟によって建てられましたが、昭和27年(1952年)に一部焼失し、その後修復が施されています。
境内は緑豊かで落ち着いた雰囲気が漂い、参道を進むと立派な一の鳥居が出迎えます。本殿は神明造の優美な様式で、厳粛な佇まいを見せています。また、拝殿は諏訪市の指定文化財にもなっており、歴史的価値の高い建造物です。さらに、拝殿の両脇には数多くの摂末社が並び、その中でも彌榮神社(いやさかじんじゃ)は本社旧本殿として市の文化財に指定されています。
その他にも、神楽殿や回廊、三の鳥居などが整然と配置され、荘厳な雰囲気を醸し出しています。境内からは諏訪湖を一望でき、特に晴れた日には湖面がきらめき、神聖な景観を楽しむことができます。
手長神社では毎年9月に八朔祭が盛大に執り行われ、9月14日の「夕祭」、15日の「例祭」、16日の「二の祭」と続く三日間、地域が活気に包まれます。古式ゆかしい神事と華やかな行列が行われ、地元の人々にとって大切な年中行事となっています。
文化財としては、拝殿(昭和59年指定)、旧本殿(平成6年指定)が諏訪市の有形文化財に登録されています。どちらも長い歴史と職人技が感じられる貴重な建造物であり、信州の神社建築を代表するものの一つといえるでしょう。
所在地は長野県諏訪市茶臼山9556。最寄り駅はJR東日本中央本線の上諏訪駅で、徒歩約7分の距離です。駅の東側の高台に位置しており、参拝の後には諏訪湖の絶景を楽しむこともできます。
手長神社は、諏訪の地に古くから伝わる信仰を今に伝える由緒ある神社です。神話の神々にまつわる深い物語と、美しい自然、そして歴史的な建造物が一体となり、訪れる人々に静寂と神聖な感動を与えます。諏訪を訪れた際には、ぜひこの手長神社に足を運び、悠久の時を感じてみてはいかがでしょうか。