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上諏訪温泉

(かみすわ おんせん)

諏訪湖畔に湧く信州の名湯と歴史の町

諏訪市の中心に広がる温泉郷

上諏訪温泉は、長野県諏訪市(旧信濃国)に湧く温泉地で、古くから諏訪大社の門前町として栄えてきました。諏訪湖の東岸に位置し、湖と山に囲まれた自然豊かな地に、大小さまざまな旅館やホテルが立ち並ぶ風光明媚な温泉街です。

温泉街には、国の重要文化財「片倉館」をはじめ、歴史を物語る建物や足湯、美術館などが点在し、観光と文化が融合する独特の風情を漂わせています。訪れる人々は、湖を望む露天風呂でくつろぎながら、四季折々の景観を楽しむことができます。

上諏訪温泉の歴史 ― 信仰と城下町の温泉文化

諏訪大社と温泉の関わり

上諏訪温泉の起源は古く、諏訪大社の信仰と深く結びついた歴史を持っています。古代より諏訪は「風と水の神」を祀る地として知られ、温泉はその恵みの一部として人々に親しまれてきました。温泉の守護を目的に建てられた「温泉寺」には薬師如来が祀られ、病を癒す霊湯として多くの参拝者が訪れたと伝えられています。

城下町・宿場町としての繁栄

江戸時代、上諏訪は高島藩(諏訪藩)の城下町として栄える一方、甲州街道の宿場町・上諏訪宿として多くの旅人で賑わいました。当時は14軒ほどの旅籠がありましたが、各宿に内湯はなく、旅人も町の人々も共同の温泉「平湯」「精進の湯」「湯之脇」「虫湯」などを利用していました。

1664年の絵画「御枕屏風」には、一般庶民の湯屋のほか、塀に囲まれた武家用の湯屋敷も描かれており、温泉文化がすでに町の暮らしの一部であったことがうかがえます。また、1817年の温泉番付では上諏訪温泉が「東の小結」に選ばれるなど、当時から名の知れた温泉地でした。

近代の発展と観光地化

明治時代に入り、地租改正により共同温泉地が官有地に分類されましたが、住民たちは払い下げを受けて共同湯を運営し続けました。製糸産業で栄えた上諏訪では内湯付きの旅館も次々と登場し、温泉文化はさらに広がります。

1905年に中央本線が開通すると、観光客が増加し、温泉街は急速に発展しました。1928年には、昭和天皇の御大典記念事業として「片倉館」が開館し、地域の象徴的な存在となります。昭和初期には旅館が50軒を超え、諏訪湖畔は信州を代表する温泉観光地として知られるようになりました。

1950年代には500を超える源泉が確認されましたが、1958年に自噴泉がなくなり、現在では動力揚湯によって温泉を供給しています。

上諏訪温泉の泉質と効能

上諏訪温泉の泉質は、主に単純温泉および単純硫黄泉で、無色透明のやわらかな湯が特徴です。源泉温度はおよそ65℃、七ツ釜温泉では80℃に達します。

効能は、外傷性諸障害、慢性湿疹、神経痛、腰痛、成人病、婦人病など幅広く、長く滞在して湯治を楽しむ人も多く見られます。肌にやさしい泉質で、「美人の湯」としても人気を集めています。

温泉街の見どころ

片倉館 ― 千人風呂の名湯

上諏訪温泉を代表する施設といえば、1928年創業の片倉館です。製糸業で知られる片倉財閥が、労働者の福利厚生と地域貢献のために建設したもので、会館棟・浴場棟・渡廊下の3棟が国の重要文化財に指定されています。

片倉館の「千人風呂」は、深さ1.1メートルの大浴場で、底には丸い玉砂利が敷かれています。入浴しながらステンドグラスや彫刻を眺めることができ、まるで美術館のような雰囲気を楽しめます。浴場の設計は森山松之助によるもので、西洋のゴシック建築の影響を感じさせる豪華な造りが特徴です。

諏訪湖間欠泉センター

1983年に噴出が確認された諏訪湖間欠泉は、1990年に整備された「諏訪湖間欠泉センター」によって観光スポットとなりました。かつては50メートルもの高さまで熱湯を吹き上げる日本有数の間欠泉でしたが、1990年代以降は自噴が止まり、現在は機械による噴出で再現されています。

センターでは諏訪湖を眺めながら足湯や軽食を楽しむことができ、近年は市による再整備も検討されています。

足湯と街歩き

上諏訪温泉では、無料の足湯が町のあちこちに設けられています。特に、JR上諏訪駅ホームの足湯は全国的にも珍しく、入場券だけで気軽に利用できる人気スポットです。諏訪湖畔にも足湯があり、湖を眺めながらのんびりとした時間を過ごすことができます。

温泉文化の広がり ― 生活に溶け込む湯の恵み

上諏訪温泉は湧出量が豊富で、市内の一般家庭でも温泉を引くことが可能です。さらに、小学校や百貨店、サービスエリアにも温泉施設が設けられており、地域全体が「温泉と共にある暮らし」を実現しています。

中央自動車道・諏訪湖サービスエリアの「ハイウェイ温泉諏訪湖」では、ドライバーも気軽に温泉を楽しむことができ、旅の疲れを癒やす憩いの場となっています。

周辺の観光スポット

温泉街周辺には、文化と芸術を堪能できる美術館が数多くあります。サンリツ服部美術館北澤美術館では東洋と西洋の名品が鑑賞でき、諏訪市原田泰治美術館では郷土画家・原田泰治の心温まる作品に触れられます。さらに、SUWAガラスの里の美術館では、ガラス工芸体験やショッピングも楽しめます。

アクセス情報

鉄道

中央本線の上諏訪駅が最寄りで、駅から温泉街までは徒歩数分という便利な立地です。現在でも観光客の約15%が鉄道を利用して訪れています。

自動車

中央自動車道諏訪インターチェンジから国道20号を経由し、約15分ほどで温泉街に到着します。諏訪湖を望むドライブコースとしても人気があります。

まとめ ― 湖と湯に癒やされる信州の情景

上諏訪温泉は、古くから信仰と共に発展し、現代では観光と文化が調和する信州を代表する温泉地として多くの人々に愛されています。
諏訪湖の穏やかな水面を眺めながら湯に浸かる時間は、まさに心身を癒やす至福のひととき。歴史ある片倉館の湯に身を委ね、湖畔の足湯で風を感じ、諏訪の文化に触れる――。上諏訪温泉は、訪れるすべての人に穏やかな時間と深い感動を与えてくれる温泉郷です。

Information

名称
上諏訪温泉
(かみすわ おんせん)

諏訪・蓼科・八ヶ岳

長野県