諏訪地域の寒天製造業は、低温な気候と安定した天気に恵まれ、他の地域よりも長く製造できることと、明治末期の鉄道開通によって発展した。寒天産業が始まったのは江戸時代。寒天作りの出稼ぎに出ていた小林粂左衛門が、故郷へ製法を持ち帰ったのが始まりだといわれている。寒天は、海藻のテングサとオゴノリなど紅藻類を煮て固めたものを、凍結・乾燥を繰り返してつくられる。
諏訪地域では、夏の料理をはじめ、菓子や年中行事の料理に必ず出てくるのが「天寄せ」である。天寄せとは、寒天を使った「寄せもの」のこと。諏訪大社の御柱祭では、祭りのおもてなし料理として振舞われている。諏訪地域の冠婚葬祭には欠かせない料理で、行事や季節などによって固める具や味が異なり、祝儀の時には「紅」、不祝儀の時には「緑」と色で使い分けられる。主に、人が集まる時によくつくられ、料理に彩りを添えてきた。
固める材料によって行事や季節に適した一品となる。中に入れる具は、そうめん、卵、くるみなどを入れ固める。季節や行事などによって、和・洋さまざま変化するところが魅力のひとつ。
7年に一度おこなわれる諏訪大社における最大の行事「御柱祭」は、4月の「上社山出し」から始まり、6月の「上社宝殿遷座祭」までおこなわれる。その間、諏訪の人々は御柱祭が暮らしの中心となり、祭りに来るお客さまをもてなすためのふるまい料理のひとつに「天寄せ」がつくられる。また、家庭料理や祭り、慶弔に利用されてきた。
主な伝承地域:諏訪地域
主な使用食材:寒天、素麺、食紅