長野県 > 諏訪・蓼科・八ヶ岳 > 横川ダム

横川ダム

(よこかわダム)

自然と調和する辰野町の治水ダム

横川ダムは、長野県上伊那郡辰野町に位置する、天竜川水系横川川に建設された重力式コンクリートダムです。高さ41メートルという規模ながら、地域の安全と発展を支える重要な存在であり、治水や利水に大きく貢献しています。また、周囲には豊かな自然が広がり、観光やレジャーの拠点としても多くの人々に親しまれています。

ダムの概要と目的

横川ダムは、洪水調節と不特定利水を主な目的として建設されました。洪水期には下流域の被害を軽減し、渇水期には生活用水や農業用水の安定供給を担っています。ダムによって形成された人造湖は「よこかわ湖」と呼ばれ、その穏やかな湖面は四季折々の風景を映し出し、訪れる人々に安らぎを与えています。

ダムの形式は重力式コンクリートダムで、コンクリートの重みで水圧を支える堅牢な構造となっています。その静かなたたずまいの中には、地域を守るための確かな技術と歴史が息づいています。

建設の経緯と背景

横川川は、中央アルプス(木曽山脈)の経ヶ岳を水源とし、やがて天竜川へと注ぐ一級河川です。かつてこの流域では、かんがい用水の整備や洪水対策が十分に進んでおらず、豪雨のたびに被害が発生していました。特に1963年(昭和38年)の集中豪雨では大規模な出水が起こり、10名の尊い命が失われる惨事となりました。

このような背景を受けて、長野県は横川川の治水事業を計画し、上流部へのダム建設を決定しました。調査は1972年(昭和47年)に開始され、長い歳月をかけて建設が進められ、1986年(昭和61年)に完成を迎えます。完成の年、地域住民を対象に名称の公募が行われ、親しみやすい「よこかわ湖」という名が選ばれました。

横川渓谷と周辺の自然

横川ダムの上流には、美しい自然に包まれた横川渓谷が広がっています。清流が岩肌を流れ落ちる「三級の滝」や、国の天然記念物に指定されている「横川の蛇石(じゃいし)」など、見どころが豊富です。秋には山々が紅葉に染まり、訪れる人々を魅了します。特に渓谷沿いの遊歩道から眺める紅葉と湖のコントラストは圧巻で、写真愛好家にも人気のスポットです。

横川の蛇石 ― 大地が生み出した神秘

横川の蛇石は、1940年(昭和15年)に国の天然記念物に指定された貴重な地質遺産です。これは、粘板岩に貫入した閃緑岩の岩脈が川底に露出し、その岩脈に直交して等間隔に石英脈が走っているという珍しい構造を持ちます。まるで蛇の体のようにうねる模様が見られることから「蛇石」と呼ばれ、地質学的にも大変興味深い存在です。自然の力が何万年もの時をかけて生み出した芸術作品のようであり、訪れる人々に深い感動を与えます。

地域の発展と観光資源としての役割

ダムの完成後、周辺地域では観光資源の整備が進みました。ダム周辺にはキャンプ場が設けられ、夏には家族連れやアウトドア愛好家で賑わいます。また、近くには地元の伝統建築を活かした体験型施設「ふる里農村公園 かやぶきの館」があり、そば打ちや陶芸などの体験が楽しめます。地域の文化と自然を一体的に感じられるスポットとして人気を集めています。

このように、横川ダムは単なる治水施設としてだけでなく、地域の観光振興や文化交流の拠点としても重要な役割を果たしています。訪れる人々が自然の恵みと人の営みの調和を実感できる場所として、辰野町の魅力を象徴する存在となっています。

横川蛇石発電所 ― 自然の力を生かすエネルギー施設

ダム直下には「横川蛇石発電所」が建設されています。この発電所は、長野県企業局が運営するダム式水力発電所で、自然の水流を利用して再生可能エネルギーを生み出しています。発電には横軸フランシス水車発電機が採用され、最大1.40立方メートル毎秒の水量を取り入れ、最大17.89メートルの有効落差を得て最大199キロワットの電力を発生させます。

年間発電量は約151万キロワット時に達し、これは地域の家庭や公共施設の電力供給を支えるに十分な量です。2018年12月に着工し、2020年4月に運転を開始、同年10月27日には竣工式が執り行われました。自然エネルギーの活用を通じて環境負荷を軽減し、持続可能な地域社会の形成に寄与しています。

アクセスと周辺の観光

横川ダムへは、JR中央本線(辰野支線)小野駅から車で訪れることができます。また、自家用車を利用する場合は、中央自動車道・伊北インターチェンジまたは長野自動車道・塩尻インターチェンジからそれぞれ約30分ほどの距離です。ダム湖周辺には展望スペースや散策路が整備されており、四季折々の自然を楽しむことができます。

さらに周辺には、しだれ栗森林公園旧小野家住宅、そして信濃国二之宮である小野神社・矢彦神社など、文化や歴史に触れられるスポットも点在しています。ダム見学とともに、辰野町や塩尻市周辺の観光も楽しめる点が魅力です。

まとめ ― 自然と人が共に生きる場所

横川ダムは、災害から人々を守るだけでなく、自然と共生する地域づくりを象徴する存在です。豊かな渓谷、神秘的な蛇石、穏やかな湖面、そして地域を支える発電所。これらすべてが調和し、訪れる人に「自然の力と人の知恵の融合」を感じさせます。

春には新緑、夏には清流、秋には紅葉、冬には静寂と、それぞれの季節に違った表情を見せる横川ダム。辰野町を訪れる際には、ぜひこの美しい風景と地域の温かさに触れてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
横川ダム
(よこかわダム)

諏訪・蓼科・八ヶ岳

長野県