ハーモ美術館は、長野県諏訪郡下諏訪町の諏訪湖畔に位置する美術館です。1990年4月、産業用ロボットメーカー「ハーモ」の創業者である濱富夫氏と、ディレクター関たか子氏によって開館されました。湖と山々に囲まれた穏やかな環境の中で、芸術と向き合うことができる文化施設として、多くの来館者に親しまれています。
美術館のコンセプトは「芸術と素朴」。理論や技巧にとらわれない純粋な視点と自由な感受性を大切にした作品を中心に展示しており、国内外でも高く評価される個性的なコレクションを誇っています。
ハーモ美術館の最大の特徴は、アンリ・ルソーに代表されるパントル・ナイーフ(素朴派)の作品を常設展示している点です。素朴派とは、専門的な美術教育を受けずに独自の感性で制作を行った画家たちの流れを指し、その純粋で温かみのある表現は今なお多くの人々を魅了しています。
館内では、アンリ・ルソーの作品を9点所蔵・展示しています。「花」「果樹園」「郊外」「ラ・カルマニョール」など、素朴でありながら幻想的な世界観を持つ作品群は、美術史においても重要な位置を占めています。特に「果樹園」(1886年)や「ラ・カルマニョール」(1893年)は、ルソーの独特な構図と色彩感覚を体感できる貴重な作品です。
アメリカの国民的画家グランマ・モーゼスの作品も7点展示されています。「春の花々」「農作業」「道に架かる古い小屋根」など、素直な視点で描かれた農村風景は、観る人の心を温かく包み込みます。
そのほか、カミーユ・ボンボワ、アンドレ・ボーシャンなど、素朴派を代表する画家たちの作品も揃い、日本有数のコレクションとして知られています。
素朴派作品だけでなく、近代美術の巨匠たちの作品も見どころです。ジョルジュ・ルオー、アンリ・マティス、マルク・シャガール、ジョアン・ミロ、マン・レイ、ベルナール・ビュフェ、藤田嗣治、荻須高徳など、多彩な芸術家の作品が展示されています。
館内入口では、サルバドール・ダリによるブロンズ彫刻「時のプロフィール」が来館者を迎えます。幻想的で象徴性に富んだダリの作品は、館の象徴的存在となっています。
館内には展示室のほか、音楽会や講演会が開催されるティーセントホール、落ち着いた雰囲気の別館、茶室「無憂華」など、多彩な空間が整えられています。絵画に囲まれた空間でのコンサートは特に人気があり、芸術を多角的に楽しめる点も魅力の一つです。
1階には、諏訪湖と富士山を一望できるティールームが併設されています。晴れた日には湖面のきらめきと遠くにそびえる富士山を眺めながら、こだわりの珈琲や紅茶を楽しむことができます。
このカフェスペースとミュージアムショップは入場無料で利用できるため、美術鑑賞とあわせてゆったりとした時間を過ごすことができます。旅の合間の休憩にも最適な場所です。
JR中央本線「下諏訪駅」より徒歩約18分。下諏訪町コミュニティバス「あざみ号」の美術館行きバスも利用できます。
中央自動車道「諏訪IC」より約10km(約20分)、または「岡谷IC」より約7km(約15分)と、車でのアクセスも良好です。
9時から17時まで開館しています。諏訪湖観光とあわせて訪れやすい時間設定となっています。
豊かな自然に囲まれた諏訪湖畔に佇むハーモ美術館は、素朴派の温かみあふれる作品と近代美術の名作を同時に楽しめる、全国でも希少な美術館です。理論や技巧を超えた純粋な表現に触れることで、芸術の原点ともいえる「描く喜び」や「見る楽しさ」を実感できるでしょう。
諏訪湖散策の折には、ぜひハーモ美術館を訪れ、静かな湖畔で心豊かなひとときをお過ごしください。