甲武信ヶ岳は、山梨県・埼玉県・長野県の3県の境界に位置し、標高2,475メートルを誇る奥秩父山塊の主峰です。別名として甲武信岳(こぶしだけ)とも呼ばれ、日本百名山に選定されている名峰の一つです。その名の由来には諸説あり、もっとも有名なのは甲州(甲斐国=山梨県)、武州(武蔵国=埼玉県)、信州(信濃国=長野県)という三国の境にあることから付けられたという説です。一方で、山の形が拳を握ったように見えることから「甲武信」という名になったという説もあります。
甲武信ヶ岳は、ただの登山スポットではありません。この山は、千曲川(新潟に入ると信濃川)、荒川、笛吹川(釜無川と合流して富士川となる)という日本を代表する三つの河川の水源地として知られています。まさに水の恵みを育む山であり、その豊かな自然環境は訪れる人々に感動を与えます。なお、山頂には三角点はなく、実は近隣の三宝山(標高2,483m)のほうがわずかに高いのですが、甲武信ヶ岳の象徴性は群を抜いています。
標高2,475メートルの山頂からは、日本百名山のうち43座を望むことができます。晴れた日には、南アルプス、八ヶ岳、富士山、奥秩父の山々など、360度の大パノラマが広がります。早朝に登頂すれば、雲海や朝焼けに染まる絶景に出会えることもあり、まさに登山者にとって至福の瞬間です。
長野県川上村の毛木平(もうきだいら)から登るルートは、最も一般的でアクセスも良好です。毛木平には、登山者向けの無料駐車場が整備され、トイレも完備されています。公共交通機関を利用する場合は、JR小海線信濃川上駅からバスで梓山まで移動し、そこから徒歩で約1時間15分で毛木平に到着します。
毛木平から千曲川源流遊歩道を通り、甲武信ヶ岳を往復するコースが最短ルートです。早朝に出発すれば、日帰りも十分可能です。このルートでは、清らかな千曲川源流を間近に感じながら歩けるのが魅力で、夏は涼やかな渓流沿いの風景を楽しめます。
健脚者には、「毛木平 → 千曲川源流遊歩道 → 甲武信ヶ岳 → 三宝山 → 武信白岩山 → 大山 → 十文字峠 → 五里観音 → 毛木平」という周回ルートがおすすめです。このルートでは、埼玉県最高峰の三宝山にも立ち寄ることができます。ピストンより約2時間長く、日帰りは体力次第ですが、山の魅力を存分に味わえるコースです。
山梨県側からは、西沢渓谷入口から徳ちゃん新道(戸渡尾根)を登るルートが一般的です。このルートは、東京方面からのアクセスに優れていますが、標準登り時間は約5時間40分と長く、日帰り登山は難易度が高めです。道中は樹林帯が続き、展望は少ないものの、初夏にはシャクナゲの群生が美しく咲き誇ります。シャクナゲの見頃は5月末から6月にかけてで、この時期に訪れる登山者も少なくありません。
奥秩父の縦走や長時間の登山を計画する際は、山小屋の利用が安心です。甲武信ヶ岳周辺には、以下の山小屋があります。
これらの山小屋は予約制の場合が多いため、登山計画を立てる際には事前の確認が必須です。
甲武信ヶ岳の魅力は、豊かな自然と歴史ある山名にあります。千曲川源流部の澄んだ水音を聞きながら歩く時間、山頂からの大展望、そして静寂に包まれた奥秩父の原生林。どの瞬間も、訪れる人の心を癒やします。また、シャクナゲの花期や秋の紅葉も見逃せません。
標高が高く、天候の変化が激しいため、防寒着やレインウェアは必携です。また、長野県側のルートは比較的歩きやすいものの、周回ルートや縦走は健脚向けで体力を要します。水分や食料は十分に準備し、計画的な登山を心がけましょう。
JR小海線信濃川上駅からバスで梓山下車、そこから徒歩約1時間15分で毛木平に到着。無料駐車場あり。
JR中央本線塩山駅・山梨市駅からバスで西沢渓谷入口まで。マイカー利用の場合は専用駐車場を利用可能。
甲武信ヶ岳は、山頂からの絶景や豊かな自然、そして歴史ある山名が魅力の日本百名山です。清流の源をたどりながら歩くルートは、まさに大自然の懐に抱かれる体験。日帰りで挑戦できるコースから、本格的な縦走ルートまで、多彩な楽しみ方ができるのも特徴です。あなたもぜひ、奥秩父の名峰「甲武信ヶ岳」で、心に残る登山の思い出を作ってみませんか?