諏訪湖祭湖上花火大会は、長野県諏訪市の諏訪湖を舞台に、毎年8月15日に開催される日本屈指の花火大会です。通称「諏訪湖花火大会」として親しまれ、全国から観光客が訪れる真夏の一大イベントです。湖面に映る花火の光と、四方を囲む山々に反響する轟音が織りなす光景はまさに圧巻で、毎年多くの人々を魅了しています。
諏訪湖祭湖上花火大会は、諏訪市で開催される「全国新作花火競技大会」と並び、「諏訪二大花火大会」として知られています。例年、約50万人もの観客が湖畔に集まり、夏の夜空を彩る約4万発の花火が打ち上げられます。なお、2023年以降は打ち上げ数の公表を控える形となりましたが、規模や迫力は変わらず、日本最大級の花火大会として高く評価されています。
諏訪湖は浅い湖であるため、湖上に設置された複数の発射台から打ち上げられる花火が水面に映し出され、幻想的な光景を作り出します。スターマイン発射台が10基設けられ、湖中には「初島(はつしま)」という人工島があり、ここから10号玉などの大玉花火が放たれます。また、湖上を横断するように設置される「大ナイアガラ瀑布」や、水面すれすれで炸裂する「水上スターマイン」は、諏訪湖ならではの名物花火として知られています。
大会は2部構成で行われ、それぞれに異なる魅力があります。
第1部では、長野県内外から選ばれた10人の花火師が参加し、10号早打ち競技とスターマイン競技の2種目で腕を競います。10号早打ち競技では、直径約30センチの大玉花火を5発連続で打ち上げ、その迫力と技術が試されます。スターマイン競技では、限られた玉数でどれだけ美しく、テーマ性のある構成を作り上げられるかが評価されます。
第2部は観客が最も心待ちにするプログラムで、次々に繰り広げられるスターマインが夜空を鮮やかに染め上げます。中でも特に有名なのが「Kiss of Fire(キス・オブ・ファイヤー)」です。湖上に広がる半球状の花火が水面に映り込み、左右から放たれた花火が初島付近で融合するという幻想的な演出で、会場全体を感動の渦に包み込みます。大会のクライマックスでは、約2kmにわたる大ナイアガラ瀑布が湖上を流れ落ち、夜空と水面が一体となる圧巻のフィナーレを迎えます。
この花火大会の起源は、1949年(昭和24年)に開催された「納涼諏訪湖花火大会」に遡ります。当時の観客数は約5万人でした。その後、名称を「諏訪湖上煙火大会」と改め、1950年には長さ200mのナイアガラが登場しました。1954年には人工島「初島」が完成し、大玉花火の打ち上げが可能となりました。
1960年代には「競技スターマイン」や「水上スターマイン」が始まり、1975年には「Kiss of Fire」という名称が付けられました。1980年代後半には10号早打ち競技が加わり、1992年からは現在の2部構成の形となりました。時代とともに大会の規模や演出は進化を続け、今では国内外から注目を集める花火大会となっています。
2006年(平成18年)には豪雨災害による被害にもかかわらず、地域やスポンサーの支援により4万発を超える花火が打ち上げられました。2013年(平成25年)には雷雨により中止となる事態もありましたが、主催者や市民の努力で安全第一を貫き、次回に向けて改善が図られました。
2020年と2021年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止または縮小開催となりましたが、2023年には4年ぶりの通常開催が実現し、再び多くの人々に感動を届けました。
大会当日は16時から22時まで、会場周辺では歩行者天国や一方通行などの交通規制が実施されます。特に中央自動車道・諏訪ICから湖畔までの道路は大変混雑し、花火終了後は3〜4時間に及ぶ渋滞が発生することもあります。2023年からは駐車場予約アプリ「akippa(あきっぱ)」による事前予約制が導入され、混雑緩和に一定の効果を上げています。
最寄駅はJR東日本中央本線の上諏訪駅です。当日は松本方面・甲府方面からの臨時列車が増発され、「ナイアガラ号」「スターマイン号」といった特別列車も運行されます。東京・新宿方面からは特急「あずさ」、名古屋・大阪方面からは特急「しなの」を利用し、塩尻駅で乗り換えるのが便利です。大会当日の駅構内は非常に混雑するため、早めの到着が推奨されています。
2012年からは、SBC信越放送とBS-TBSの共同制作による全国生中継が実施され、全国どこからでも諏訪湖花火の感動を味わえるようになりました。また、地元ケーブルテレビ「LCV」でも同時中継が行われ、近年では英語によるインターネット配信「Japan News」も展開され、世界中の視聴者に向けて諏訪湖の美しい花火が発信されています。
諏訪湖祭湖上花火大会は、単なる花火大会ではなく、自然と技術、伝統と革新が融合した壮大な芸術イベントです。戦後復興から始まり、幾多の困難を乗り越えながら成長を続けてきたこの大会は、今も地域の誇りとして輝き続けています。夏の夜、諏訪湖に映る光の饗宴は、訪れるすべての人々に忘れられない思い出を残すことでしょう。