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星糞峠 黒曜石 原産地遺跡

(ほしくそ とうげ こくようせき げんさんち いせき)

星降る中部高地に眠る縄文の遺産

縄文の黒曜石採掘跡

星糞峠黒曜石原産地遺跡は、長野県小県郡長和町に位置する、縄文時代の黒曜石採掘の痕跡を残す重要な遺跡です。この地は、2001年(平成13年)に国の史跡に指定され、現在では日本遺産「星降る中部高地の縄文世界」の構成文化財の一つとして認められています。

地名の由来と黒曜石との関わり

「星糞(ほしくそ)」という地名は一風変わった響きを持ちますが、これは黒曜石を意味する地元の方言です。この地域一帯は、遠方から見ると黒曜石がきらきらと輝いて見えたため、まるで星のかけらが降り積もっているように感じられたことから、このように呼ばれるようになりました。実際には、これは縄文人によって採掘された黒曜石の破片、いわゆる「割くず」が地表に散乱しているためです。

発見と調査の経緯

1980年代の発見から本格調査へ

この遺跡が注目を集めるようになったのは、1986年(昭和61年)の鷹山遺跡群の分布調査がきっかけです。このとき、虫倉山の斜面で大量の黒曜石の原石が発見されました。さらに、1991年(平成3年)から始まった星糞峠周辺の調査では、虫倉山にかけて約195基のクレーター状のくぼみが確認され、そのうちの一部を試掘した結果、それが黒曜石の採掘跡であることが明らかになったのです。

全国に広がる黒曜石の流通

この遺跡で産出された黒曜石は、なんと日本全国、遠くは北海道や九州にまで運ばれていたことが考古学的に確認されています。これは、縄文時代からすでに黒曜石が交易品として重要視されており、星糞峠がその供給拠点の一つであったことを物語っています。

使用された時代

この遺跡が正確にいつからいつまで使われていたかを断定することは難しいですが、調査の結果から、縄文時代草創期から最終期に至るまでの長い期間にわたって活発に採掘が行われていたと推定されています。

国史跡としての保護と整備

広大な採掘エリア

2001年には、195基に及ぶ採掘跡や工房跡など、総面積6.6ヘクタールに及ぶエリアが国の史跡として正式に指定されました。この区域は現在、「星糞峠黒曜石原産地遺跡歴史公園」として整備され、一般の観光客や研究者が訪れることができるようになっています。

現地施設の充実

遺跡の麓には、黒曜石文化を体験的に学べる「黒耀石体験ミュージアム」が整備されており、黒曜石の加工体験や展示を楽しむことができます。また、現地の鉱山跡へは遊歩道が整備されており、徒歩で約30分ほどで到達できます。

明治大学黒耀石研究センター

峠の直下には、明治大学が設立した「黒耀石研究センター」があります。この施設は、長和町と大学との共同研究により開設されたもので、遺跡の学術的価値の解明や保存活動の中核を担っています。なお、施設名称では「黒耀石」という表記を採用していますが、史跡名では「黒曜石」が用いられています。

新たな展示施設「星くそ館」

2021年には、新たな展示施設「星くそ館」が開館しました。この施設では、実際の発掘トレンチの様子をガラス越しに見学できるようになっており、訪問者に当時の採掘の様子や発掘技術を直接体感させる工夫がなされています。

アクセスと開館期間

この遺跡は標高約1,500メートルの高地にあるため、冬季には積雪により閉鎖されることがあります。特に星くそ館は、4月下旬から11月下旬までの季節限定での開館となっています。最寄りの交通手段としては、JR東日本中央本線の茅野駅から車で約1時間程度の距離に位置しています。

学術的・文化的価値

縄文人の暮らしと知恵

この遺跡は、縄文人の暮らしや交易、資源活用の高度な知識を現代に伝える貴重な存在です。黒曜石は道具としてだけでなく、交易の媒体としても使われていたことから、当時の人々の生活がいかに広域にわたって交流していたかを示しています。

日本遺産に認定

星糞峠黒曜石原産地遺跡は、「星降る中部高地の縄文世界」として日本遺産に認定され、全国から高い評価を得ています。この文化財は、縄文時代の精神性や自然観、資源利用に対する独自の文化的価値を内包しているといえるでしょう。

まとめ:縄文の記憶が眠る場所へ

星糞峠黒曜石原産地遺跡は、単なる考古学的遺構にとどまらず、縄文時代の生活文化や技術、そして自然との共生を今に伝える貴重な場です。歴史や文化に興味のある方はもちろん、自然の中で学びと体験を楽しみたい方にもおすすめのスポットです。ぜひ、黒曜石が星のように煌めくこの地を訪れ、遥かなる縄文の世界に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
星糞峠 黒曜石 原産地遺跡
(ほしくそ とうげ こくようせき げんさんち いせき)

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