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長野県 > 諏訪・蓼科・八ヶ岳 > 沓掛温泉

沓掛温泉

(くつかけ おんせん)

静かな山里にたたずむ歴史ある湯治場

沓掛温泉は、長野県小県郡青木村の山間にひっそりとたたずむ温泉地です。規模は小さいながらも、豊かな自然と長い歴史に包まれた温泉街には、昔ながらの湯治場の風情が残されています。

青木村は「信州の鎌倉」とも呼ばれる地域で、寺社や史跡などの歴史文化と山里の自然が調和しています。沓掛温泉では、温泉にゆっくり浸かるだけでなく、周辺を散策しながら静かな時間を楽しむことができます。

ぬる湯が魅力の沓掛温泉

硫黄の香りが漂うやさしい湯

沓掛温泉の源泉は硫黄泉で、湯の温度は約39度とややぬるめです。熱い湯に短時間浸かるのではなく、ゆっくりと湯船に身をゆだねながら長湯を楽しめることが特徴です。

硫黄の香りがほのかに漂う湯は、昔ながらの湯治場の雰囲気にもよく似合います。静かな山里で温泉に浸かり、日頃の疲れをゆっくりと癒やしたい人に適した温泉です。

湯治場として受け継がれる温泉文化

沓掛温泉は古くから湯治場として利用されてきました。温泉は高血圧、消化器病、皮膚病、神経痛、筋肉痛、慢性関節リウマチ、糖尿病、呼吸器疾患などに良いとされ、さらに不妊症、更年期障害、卵巣機能不全、肩こりや腰痛などにも利用されてきたと伝えられています。

こうした温泉の利用は、観光だけを目的としたものではなく、地域の人々の日常生活とも深く結びついています。現在も地元の人々が日常的に利用する、暮らしに根ざした温泉です。

夫神岳のふもとに広がる温泉街

山と川に囲まれた静かな環境

温泉街は標高約670メートルの山間に位置し、夫神岳(おがみだけ)の西麓、沓掛川のほとりに広がっています。川沿いの坂道を上った先に温泉街があり、周囲には山々と豊かな自然が広がっています。

大規模な観光施設や歓楽街はなく、昔ながらのひなびた温泉地の雰囲気が残されています。静けさの中で温泉を楽しめることが、沓掛温泉ならではの魅力です。

昔ながらの宿と共同浴場

歴史を受け継ぐ宿泊施設

かつて沓掛温泉には「おもとや」「かどや」「叶屋(かなふや)」の3軒の旅館があり、合計125名を収容できる温泉地として賑わっていました。

現在は宿泊施設の再編が進み、昔ながらの温泉文化を受け継ぎながら、それぞれの宿が営業しています。

叶屋旅館は、昔ながらの温泉宿の雰囲気を残す宿です。また、旧「おもとや旅館」は2016年にリニューアルされ、「満山荘」として新たに生まれ変わりました。

共同浴場「小倉乃湯」

「小倉乃湯(おぐらのゆ)」は、沓掛温泉を代表する共同浴場です。地元の人々にも利用されている素朴な温泉施設で、昔ながらの湯治場の雰囲気を感じることができます。

入浴料は大人200円、小人100円で、火曜日が定休日です。1998年には改築され、現在も地域の共同浴場として利用されています。

日帰り温泉「くつろぎの湯」

「くつろぎの湯」は、旧「かどや旅館」を改装した日帰り入浴施設です。大人300円、小人200円で利用でき、月曜日が定休日です。

宿泊をしなくても気軽に温泉を楽しめるため、青木村周辺を観光する際の立ち寄り湯としても利用できます。

暮らしの中に息づく温泉文化

共同浴場の横には、温泉を利用して野菜などを洗う洗い場もあります。観光施設としてだけでなく、地域の暮らしの中で温泉が利用されていることを感じられる光景です。

こうした生活に密着した温泉文化は、大規模な温泉リゾートでは味わいにくい、沓掛温泉ならではの魅力といえるでしょう。

平安時代から続く沓掛温泉の歴史

滋野親王の伝説

沓掛温泉の開湯は平安時代とされ、非常に古い歴史を持つ温泉です。

伝承によれば、信濃国司として赴任していた滋野親王が、この地で眼病を癒やすために湯治を行ったとされています。その効果に感銘を受けた親王が、温泉の近くに薬師堂を建立したという伝説が残されています。

「小倉乃湯」の名前にまつわる伝承

また、滋野親王が温泉の裏山を眺めた際、その姿が故郷の京都にある小倉山に似ていると感じたことから、温泉を「小倉乃湯」と名づけたとも伝えられています。

現在も共同浴場の名称として「小倉乃湯」が残されており、古くからの伝承を今に伝えています。

国民保養温泉地としての沓掛温泉

田沢温泉とともに指定

1970年3月24日、沓掛温泉は田沢温泉とともに、厚生省の告示によって国民保養温泉地に指定されました。

豊かな自然環境と温泉を生かし、保健や休養のために利用できる温泉地として評価されたもので、古くから続く湯治場としての価値を現在にも伝えています。

時代とともに変化する温泉街

共同浴場の整備と旅館の再生

沓掛温泉では、歴史ある温泉文化を守りながら、時代に合わせた施設の整備も行われてきました。

1998年には「小倉乃湯」が改築され、共同浴場として利用しやすい施設へと生まれ変わりました。また、2015年には「おもとや旅館」が閉館しましたが、翌2016年にはリニューアルされ、「満山荘」として新たなスタートを切っています。

昔ながらの温泉街の風情を残しながら、新しい形で温泉文化を受け継いでいることも沓掛温泉の特徴です。

温泉街周辺の散策スポット

温泉薬師堂

温泉薬師堂は、沓掛温泉の歴史と薬師信仰を伝える場所です。開湯伝説とも関わりが深く、温泉と信仰が結びついてきた歴史を感じることができます。

小倉山遊歩道

小倉山遊歩道は、温泉街の裏山を歩きながら自然を楽しめる散策コースです。山あいの静かな環境の中で、温泉街とは異なる自然の表情を楽しめます。

風穴と炭焼窯跡

風穴は、かつて食品や蚕種などの保存に利用された天然の冷蔵庫です。自然の冷気を利用して暮らしを支えてきた昔の知恵を知ることができます。

また、炭焼窯跡では、かつて白炭を焼いていた窯が復元されています。休憩所も整備され、散策途中に立ち寄ることができます。

夫神岳登山道

夫神岳登山道は、温泉街を囲む豊かな自然を楽しめる登山コースです。山歩きと温泉を組み合わせれば、沓掛温泉ならではの自然体験を楽しめます。

石芋公園

石芋公園(野生里芋公園)は、長野県指定天然記念物「沓掛の野生里芋群生地」を整備した公園です。温泉だけでなく、地域固有の自然にも触れられるスポットです。

沓掛温泉へのアクセス

公共交通機関を利用する場合

沓掛温泉へ公共交通機関で訪れる場合は、北陸新幹線・しなの鉄道の上田駅から千曲バスの青木行きに乗車します。約30分で「青木」バス停に到着し、そこから青木村営バスの入奈良本・釜房方面行きに乗り換えます。

青木村営バスでは約10分で「沓掛温泉」停留所に到着します。公共交通機関を利用することで、上田から青木村の山里へと移り変わっていく景色も楽しめます。

静かな山里で湯治文化に触れる旅

沓掛温泉は、平安時代から続く歴史と、豊かな自然、そして地域の暮らしに根づいた温泉文化が調和する静かな温泉地です。約39度の硫黄泉はゆっくりと浸かるのに適しており、昔ながらの共同浴場では湯治場の素朴な雰囲気を感じることができます。

温泉街を歩けば、薬師堂や小倉山遊歩道、風穴、炭焼窯跡など、地域の歴史や暮らしを伝える見どころにも出会えます。夫神岳の自然や石芋公園などを訪ねれば、温泉と合わせて山里の魅力をじっくり味わうこともできます。

大規模な温泉リゾートとは異なる、静かで素朴な魅力を持つ沓掛温泉。温泉に浸かり、山里を歩き、地域に受け継がれてきた暮らしや歴史に触れる――そんなゆったりとした旅を楽しみたい人におすすめの温泉地です。

Information

名称
沓掛温泉
(くつかけ おんせん)

諏訪・蓼科・八ヶ岳

長野県