高瀬ダムは、長野県大町市に位置し、一級河川である信濃川水系・高瀬川の上流部に建設された大規模なロックフィルダムです。1979年に完成し、現在は東京電力リニューアブルパワーによって管理されています。高さ176メートルという規模は、日本国内のロックフィルダムとしては最大であり、総合的にも黒部ダムに次ぐ高さを誇ります。
このダムは、新高瀬川発電所の上部調整池として機能し、下部調整池である七倉ダムとの間で揚水式発電を行っています。その発電規模は最大128万キロワットに達し、日本有数の大規模水力発電所の一つとして首都圏の電力供給を支えています。また、ダムによって形成された湖は「高瀬ダム調整湖」と呼ばれ、2005年に「ダム湖百選」に選定されました。
エメラルドグリーンに輝く湖面が特徴で、日によって色合いが変化し、訪れる人々を魅了します。ダムは中部山岳国立公園内にあり、環境保護の観点から自家用車の乗り入れは禁止されており、特定のタクシーや徒歩のみでのアクセスとなります。
高瀬川は、飛騨山脈を源流とする急流河川で、日本有数の豪雪地帯に位置しています。その豊富な水量と急流特性から古くから水力発電に適した河川として注目されてきました。大正時代には東信電気が高瀬川第一発電所を建設し、その後も次々と発電所を整備しました。
第二次世界大戦後、東京電力が高瀬川の発電施設を引き継ぎ、首都圏の電力需要の増加に対応するため再開発計画が進められました。当初は巨大ダムと複数の発電所を組み合わせる構想でしたが、火力発電の普及に伴い計画は修正され、高瀬ダムと七倉ダムを活用した揚水式発電計画へと変わりました。
1969年に着工されたこの事業は、10年の歳月をかけて1979年に完成しました。深夜の余剰電力を利用して下池から上池へ水を汲み上げ、昼間の需要に合わせて発電する仕組みは、効率的な電力運用を実現しています。
新高瀬川発電所は、高瀬ダムを上池、七倉ダムを下池とする揚水式水力発電所です。最大出力128万キロワットという大規模な発電力を持ち、30万キロワット級の水車発電機を4台備えています。地下に設置された発電施設は規模も大きく、日本の電源供給において重要な役割を担っています。
かつては「高瀬川テプコ館」においてダムや発電所の見学が行われていましたが、2011年の東日本大震災後に閉館となりました。
高瀬ダムへは、七倉山荘前のゲートからアクセスできます。信濃大町駅から七倉山荘前まではタクシーで約30分、そこから先は一般車両の通行は禁止されており、特定タクシー(4月下旬~11月初旬まで運行)または徒歩での移動となります。徒歩の場合、片道約1時間30分から2時間かかります。
高瀬ダムは長野県屈指の紅葉の名所である高瀬渓谷に位置しており、特にダム堤頂から眺める紅葉は鮮やかで感動的です。見頃は例年10月中旬から下旬で、多くの観光客が訪れます。
堰堤近くには槍見台と呼ばれる展望台があり、天候に恵まれれば槍ヶ岳の山頂を望むことができます。また、不動沢の吊り橋や濁沢の滝なども散策スポットとして人気です。特に濁沢の滝は迫力ある景観と紅葉のコントラストが美しく、写真愛好家に人気です。
ダム湖の奥には湯俣温泉があり、槍ヶ岳や野口五郎岳方面への登山基地としても利用されています。高瀬ダムから徒歩約2時間半で到達でき、山岳観光と温泉を同時に楽しめる貴重なスポットです。
高瀬ダムは、日本第二位の高さを誇る巨大ロックフィルダムであり、首都圏の電力供給を支える重要な発電拠点です。同時に、高瀬渓谷の美しい自然や紅葉、周辺の温泉・登山スポットなど観光資源としての魅力も豊富に備えています。エメラルドグリーンに輝く湖面や壮大なダムの姿は、訪れる人々に忘れがたい印象を与えてくれることでしょう。