白馬岳(しろうまだけ、はくばだけ)は、飛騨山脈(北アルプス)北部の後立山連峰にそびえる標高2,932mの名峰です。長野県と富山県の県境に位置し、中部山岳国立公園に含まれる雄大な山であり、日本百名山や花の百名山にも選ばれています。白馬岳は杓子岳、白馬鑓ヶ岳とあわせて「白馬三山」と呼ばれ、登山者や自然愛好家に広く親しまれています。
特徴的なのは、日本最大の雪渓「白馬大雪渓」を有することです。夏でも雪が残るその姿は圧巻で、雪解け後には多彩な高山植物が咲き誇り、美しいお花畑が広がります。また、山腹には白馬鑓温泉や蓮華温泉といった高所の温泉が点在し、登山と温泉をあわせて楽しむことができる貴重な場所でもあります。
白馬岳の名は、雪解けの季節に黒い岩肌と残雪が組み合わさって現れる「代掻き馬(しろうま)」の雪形に由来するとされています。かつては「代馬岳(しろうまだけ)」とも表記され、時代とともに「白馬岳」という呼称に変わっていきました。
江戸時代中期には「西岳」「西山」と呼ばれることもあり、また越中や越後からは「大蓮華岳」と称されることもありました。明治以降、登山の記録や地形図の記載によって「白馬岳」が広まり、現在に至っています。
白馬岳は北アルプス北部に位置するため、残雪が豊富で夏季でも雪渓が残ります。5月頃から春山登山が始まりますが、雪崩の危険もあるため注意が必要です。7月から8月にかけては晴天が多いものの、午後の雷雨や夕立が頻発します。秋には紅葉が山肌を彩り、10月には初雪を迎えて急速に冬山へと移り変わります。
白馬岳一帯は「白馬連山高山植物帯」として特別天然記念物に指定されており、日本を代表する高山植物の宝庫です。シロウマアサツキ、シロウマリンドウ、シロウマタンポポなど、白馬の名を冠する固有種が多数存在します。雪解け後にはイワオウギ、クロユリ、ハクサンフウロ、コマクサなど多彩な花々が咲き誇り、登山者を魅了します。
森林限界を越えた稜線付近にはハイマツ帯が広がり、国の特別天然記念物であるライチョウが生息しています。運が良ければ、登山中にその愛らしい姿に出会えることもあります。
白馬岳登山の代表的なルートは、JR白馬駅からバスで猿倉へ入り、そこから白馬大雪渓を経由するコースです。大雪渓は日本三大雪渓のひとつで、夏でも雪上を歩くスリルを味わうことができます。所要時間は登り約7時間、下り約5時間で、シーズンには多くの登山者でにぎわいます。
白馬岳へは蓮華温泉から白馬大池を経由するルート、栂池高原からゴンドラとロープウェイを乗り継ぎ白馬大池を経由するルートなど、複数の登山道が整備されています。また、朝日岳や唐松岳方面からの縦走路としても人気があります。
白馬岳周辺には山小屋が点在しており、登山者の重要な拠点となっています。中でも白馬山荘は収容人数800人を誇る日本最大級の山小屋で、シーズン中は多くの登山者が利用します。その他にも白馬大池山荘、白馬鑓温泉小屋、村営白馬岳頂上宿舎などがあり、予約制のテント場も整備されています。
これらの施設は、登山の安全性を高めるだけでなく、食事や温泉などの楽しみも提供してくれます。特に白馬鑓温泉は標高2,100mに位置する秘湯として知られ、山登りの疲れを癒す格別の体験ができます。
白馬岳へのアクセスは比較的便利で、JR大糸線の白馬駅や信濃森上駅から登山口へ向かうバスが運行しています。猿倉までは白馬駅からバスで約30分、栂池高原へはゴンドラやロープウェイを利用するルートもあります。富山県側からは平岩駅から蓮華温泉へ、また黒部峡谷鉄道の欅平駅からアプローチすることも可能です。
白馬岳は、雄大な雪渓、可憐な高山植物、歴史ある登山道や温泉など、多彩な魅力を持つ山です。登山初心者からベテランまで楽しめるルートが揃い、四季折々の自然の表情を堪能できます。信州・北アルプスを代表する名峰として、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。