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清水寺(山形村)

(きよみずでら)

長野県山形村に佇む高原の霊場

清水寺は、長野県東筑摩郡山形村の豊かな自然に包まれた清水高原に位置する、真言宗の古刹です。山号は慈眼山(じげんざん)といい、その歴史は奈良時代にまでさかのぼると伝えられています。標高1200メートルという高所に建つこの寺は、四季折々の美しい景観と、静寂に満ちた神聖な空気に包まれ、訪れる人々に深い安らぎと心の癒しを与えてくれる場所として知られています。

古代に遡る創建と伝説

寺の創建については諸説ありますが、伝承によれば、奈良時代の高僧行基菩薩が自ら千手観音像を刻み、これを安置したことが始まりとされています。その後、平安時代に名将坂上田村麻呂が、有明山に棲むとされた鬼「魏石鬼八面大王」を討伐する際、戦勝祈願のためにこの寺を再興したと伝わります。この地に祀られる清水観音が、その戦いにおいて大きな力を発揮したという逸話は、今なお村人の間に語り継がれています。

さらに興味深いのは、坂上田村麻呂が後に千手観音像を都・京都に遷座させたという伝承で、これが京都東山の有名な「清水寺」の起源であるとも言われています。このため、山形村の清水寺は「信州の清水」と呼ばれ、京都の清水寺と並び称されることもあります。

本尊と建築の特徴

本尊は千手観音菩薩像で、左右の手を頭上に掲げ、小さな如来像を捧げ持つ「清水様式」と呼ばれる造形をしています。これは京都の清水寺に見られる仏像の形式と共通しており、両者の深い関係を物語っています。

境内は自然の地形を活かした造りで、周囲には樹齢数百年の杉や松が立ち並び、厳かな雰囲気を漂わせています。特に朝霧に包まれる早朝の境内は神秘的で、参拝者からは「まるで浄土に迷い込んだかのよう」との声も聞かれます。鐘楼から響く鐘の音は、山々にこだまし、訪れる人々の心を静かに鎮めてくれます。

山中高所に残る数少ない古寺

平安時代以降、顕密仏教の寺院はしばしば山中に建立されました。しかし、多くの寺は時代の変遷とともに山腹や山麓に移転し、より参拝しやすい場所へと変化していきました。その中で、清水寺は創建以来、山中の高所に留まり続ける数少ない寺院の一つです。この点が、清水寺の特異な存在として高く評価される理由でもあります。

中信地方には、山中に建立されながら後に移転したと伝えられる寺が数多くあります。松本市の牛伏寺若沢寺、筑北村の安養寺、麻績村の福満寺などがその代表です。しかし、清水寺は現在もなお清水高原の山中に佇み、古代の姿をとどめる貴重な存在となっています。

若沢寺との関係と共通点

特に松本市波田にある若沢寺とは、地理的にも精神的にも深い関係を持っています。両寺は鉢盛山から続く尾根筋に位置し、同じ坂上田村麻呂の中興伝説を有する真言宗の寺院です。また、山号も共に「慈眼山」であることから、古くから修験道や山岳信仰の拠点として機能していたことが推察されます。

アクセスと周辺環境

清水寺へは、長野県道25号塩尻鍋割穂高線、通称「サラダ街道」からアクセスします。途中、唐沢集落の入口を入り、約4キロメートルほど道なりに登ると到着します。山道ではありますが、整備は行き届いており、途中の景観も見事です。車載ナビによっては通行困難な旧道を案内される場合もあるため、注意が必要です。

唐沢集落はそばの産地としても知られており、清水寺参拝の前後に地元の蕎麦を味わうのもおすすめです。また、近くには宿泊・入浴施設の「スカイランドきよみず」があり、旅の疲れを癒すことができます。さらに、清水高原を走る「きよみずスカイライン」からは北アルプスの雄大な山々を一望でき、ドライブコースとしても人気があります。

心の平穏をもたらす祈りの地

現在、清水寺は僧侶の常駐する寺ではなく、地元の保存会によって大切に維持管理されています。朝夕には管理人が鐘を打ち、今も昔と変わらぬ祈りの音が山々に響き渡ります。その響きは、訪れる人々の心に静かな感動を与え、時の流れを超えて仏の教えを伝えているかのようです。

長い歴史と伝説を背負いながら、山の静寂の中に凛と立つ清水寺。ここは単なる観光地ではなく、自然と人間の祈りが共鳴する「信仰の聖地」です。訪れた人は誰しも、清らかな空気と穏やかな鐘の音に包まれながら、日常を忘れ、心の平穏を取り戻すことができるでしょう。

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名称
清水寺(山形村)
(きよみずでら)

安曇野・白馬

長野県