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碌山美術館

(ろくざん びじゅつかん)

近代彫刻の先駆者・荻原守衛の魂を伝える場所

碌山美術館は、長野県安曇野市穂高にある美術館で、近代日本彫刻の扉を開いた芸術家 荻原守衛(号:碌山) の作品と資料を保存・公開するために設立されました。碌山は明治期を代表する彫刻家であり、「東洋のロダン」と称された人物です。彼の芸術に対する情熱と精神を今に伝えるこの美術館は、安曇野の豊かな自然に抱かれ、訪れる人々に静謐で深い感動を与えています。

設立の背景と碌山の歩み

荻原守衛は、1879年(明治12年)に南安曇郡東穂高村(現・安曇野市穂高)で生まれました。若くして彫刻の道を志し、アメリカやフランスに留学して本格的な芸術を学びました。彼は西洋彫刻の写実的表現と日本的な精神性を融合させた独自の作風を築き上げましたが、その活動期間はわずか10年ほど。30歳という若さでこの世を去りました。

碌山美術館は、彼の遺志と作品を後世に伝えるために、地元の人々や県内外の児童・生徒およそ30万人の寄附によって建設され、1958年(昭和33年)に開館しました。草花と木々に囲まれたこの美術館は、荻原の芸術が育まれた自然の息吹と調和するように設計され、訪れる人々がゆっくりと作品に向き合える空間を提供しています。

碌山館 ― 魂を宿す本館

美術館の中心となる建物が「碌山館」です。赤レンガ造りの外壁にツタが絡まり、西洋の教会を思わせる荘厳な雰囲気を漂わせています。鐘楼の上にはフェニックス像が掲げられ、再生と希望を象徴しています。この建物は建築家・今井兼次の設計によるもので、1957年に完成しました。平成10年(1998年)には「公共建築百選」に選ばれ、2009年には国の登録有形文化財にも指定されています。

館内には荻原の代表作である「女」「北條虎吉像」をはじめ、絵画・書簡・写真などが展示されています。特に「女」は、明治以降の彫刻として初めて国の重要文化財に指定された作品で、内面の苦悩と生命の力強さを同時に表現した傑作とされています。

杜江館(もりえかん) ― 荻原の絵画とスケッチ

碌山館の隣に位置する杜江館は、荻原の油彩やデッサン、スケッチなどを展示する展示棟です。1階には彼の絵画作品が並び、2階は図書資料室として利用されています。ここでは、彫刻家としての荻原だけでなく、画家・思想家としての側面にも触れることができます。建物は2008年に完成し、モダンで落ち着いたデザインが特徴です。

第一展示棟と第二展示棟 ― 芸術の交わり

碌山が親交を深めた芸術家たちの作品を紹介するのが第一展示棟です。ここでは、高村光太郎、戸張孤雁、中原悌二郎、斎藤与里など、日本近代彫刻の礎を築いた作家たちの作品を鑑賞することができます。建築は1982年に竣工し、落ち着いた雰囲気の中で作品世界に没入できます。

また、第二展示棟では、常設展のほかに季節ごとの企画展や特別展も開催されています。荻原の影響を受けた後進の彫刻家や現代アーティストの作品も取り上げられ、碌山の精神が今も息づいていることを実感させてくれます。

グズベリーハウス ― 憩いと学びの空間

木造校倉造りのグズベリーハウスは、1967年に建てられたレストハウス兼ミュージアムショップです。ここでは、碌山美術館オリジナルのポストカードやブロンズ像のレプリカなど、アート関連グッズが販売されています。また、展示コーナーではブロンズ像が完成するまでの過程を写真や模型で紹介しており、彫刻の奥深い世界を学ぶことができます。

自然と建築が織りなす美の空間

碌山美術館の魅力は、展示作品だけでなく、建物と庭園が一体となった空間デザインにもあります。四季折々の草花が咲き誇る庭を散策すると、木漏れ日が差し込む中にツタの絡まるレンガ壁が浮かび上がり、まるで時が止まったかのような静寂に包まれます。館庭には「空を見上げるイス」と呼ばれるベンチが設けられ、穂高の青空を仰ぎながら芸術と自然が調和するひとときを味わえます。

荻原守衛 ― 芸術に生きた短くも輝かしい生涯

荻原守衛は、日本近代彫刻の礎を築いた先駆者として、今なお多くの芸術家たちに影響を与えています。彼の作品は、外面的な美だけでなく、人間の内面に潜む感情や苦悩を形にしようとする強い意志が感じられます。その生涯は短くとも、彼が残した精神と作品は、時を越えて人々の心を揺さぶり続けています。

アクセス情報

碌山美術館へのアクセスは便利で、JR大糸線穂高駅から徒歩約7分。駅から美術館までは「碌山通り」と呼ばれる穏やかな並木道が続き、道すがら安曇野の風景を楽しむことができます。自然と芸術が共存するこの地で、碌山の魂に触れる静かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

住所:長野県安曇野市穂高5095-1
開館時間:9:00〜17:00(冬季は変更あり)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)

碌山美術館は、芸術を愛するすべての人にとっての聖地とも言える存在です。安曇野の自然と共に生きた荻原守衛の精神が、今もこの地で静かに息づいています。

Information

名称
碌山美術館
(ろくざん びじゅつかん)

安曇野・白馬

長野県