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旧中村家住宅(長野県大町市)

(きゅう なかむらけ じゅうたく)

旧中村家住宅は、長野県大町市美麻に所在する歴史的建造物であり、江戸時代前期の農村住居の姿を現在に伝える貴重な民家です。元禄11年(1698)に建築された主屋は、建築年代が明確に分かる民家としては長野県内で最古とされており、国の重要文化財に指定されています。長い歴史を持つこの建物は、当時の上層農民の暮らしを知るうえで欠かすことのできない資料として、現在も多くの人々を魅了しています。

文化財としての価値

旧中村家住宅は、1993年に長野県の県宝に指定され、さらに1997年12月には土蔵を含めて国の重要文化財に指定されました。建物は1996年に中村家から旧美麻村に譲渡され、その後の市町村合併によって大町市の所有となり、地域の文化遺産として大切に保存・公開されています。

建築の特徴と構造

主屋の規模と造り

主屋は、桁行14間(約27.7m)、梁行6間、建坪約84坪(約278㎡)の規模を誇り、木造平屋建て、茅葺寄棟造という伝統的な構造を持っています。その大きさは当時の農家住宅としては県内でも屈指であり、農村における生活様式を知るうえで非常に重要です。

正面右手には、来客の中でも武士が訪れた際に用いられる式台が設けられており、身分差を意識した当時の生活習慣がうかがえます。また、右手の大きな戸は、人や馬の出入口として利用されていました。屋内には、土間、馬屋、茶の間、客座敷、寝間、麻掻場など、多様な生活空間が配置され、上層農民ならではのゆとりある暮らしが再現されています。

素材と技術

建材には栗材や桂材が多く使われ、丈夫で長持ちする工夫が施されています。さらに、建築当時の手斧で削られた柱がそのまま残っており、当時の大工技術を間近に感じることができます。広い土間は作業場として利用され、地面には掘りごたつのような炉が設けられ、生活の知恵と工夫が随所に表れています。

煙出しの工夫

屋根の棟上部には「煙出し」が設けられており、囲炉裏や炉からの煙を外に逃がす役割を担っていました。この煙は屋根を守る防虫効果や、木材を燻して長持ちさせる働きもあり、伝統家屋ならではの合理的な工夫が凝縮されています。

土蔵の特徴

1780年(安永9年)に建てられた土蔵も、重要な見どころの一つです。桁行6間、梁行4間の切妻造で、置屋根を持ち、軒支柱を立てて屋根の荷重を支える独特の構造となっています。3尺(約99cm)間隔で配置された栗材の柱は頑丈で、長い年月を経てもなお屋根をしっかりと支え続けています。

この土蔵は、建築年代が判明しているものの中でも長野県内では古い部類に属し、貴重な建築遺構として高い評価を受けています。

敷地内の十王堂と信仰

十王堂の存在

旧中村家住宅の敷地内には十王堂があり、木造の十王像や地蔵菩薩像が安置されています。さらに堂の前には数多くの石造物が立ち並んでおり、当時の人々が篤い仏教信仰を抱いていたことを伝えています。

このように、旧中村家住宅は単なる住居の保存にとどまらず、地域の信仰や暮らしの精神的な側面までも伝えている点が大きな魅力です。

観光としての楽しみ方

歴史に触れる体験

訪れる人は、当時の生活空間をそのまま感じ取れる主屋や土蔵を見学することで、江戸時代の農村社会のリアルな暮らしを想像することができます。囲炉裏や土間のある空間に立つと、まるで300年前の生活にタイムスリップしたかのような感覚を味わえるでしょう。

文化財を守る意識

旧中村家住宅は、ただ鑑賞するだけでなく、後世に文化を引き継ぐ大切さを考えるきっかけにもなります。地元の人々や行政によって保存活動が行われ、今もなおその姿を残していることは、地域の誇りであり訪問者に深い感銘を与えます。

周辺観光との組み合わせ

大町市は北アルプスの玄関口としても知られ、自然豊かな観光資源に恵まれています。旧中村家住宅の見学とあわせて、高瀬渓谷や大町ダム、仁科三湖などの観光スポットを巡ることで、より充実した旅を楽しむことができるでしょう。

まとめ

旧中村家住宅は、長野県最古の民家建築として歴史的価値を持つだけでなく、当時の農村生活や信仰心を今に伝える貴重な文化遺産です。主屋や土蔵に残された建築技術、敷地内に佇む十王堂など、見どころは多岐にわたり、訪れる人々に深い感動を与えてくれます。大町市を訪れる際には、ぜひ足を運んでその歴史と文化を体感してみてください。

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名称
旧中村家住宅(長野県大町市)
(きゅう なかむらけ じゅうたく)

安曇野・白馬

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