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沙田神社

(いさごだ じんじゃ)

沙田神社は、長野県松本市島立三ノ宮に鎮座する由緒ある神社で、古くから「信濃国三宮」として崇敬を集めてきました。『延喜式神名帳』にもその名が記される式内社であり、旧社格は県社。神紋には三階菱が用いられ、古代からの格式と伝統を感じさせます。松本城の守護神としても厚く信仰され、現在も地元の人々に親しまれています。

祭神と神格

主祭神として祀られているのは、彦火火見尊(ひこほほでみのみこと)豊玉姫命(とよたまひめのみこと)、そして沙土煮命(すいじにのみこと)の三柱です。これらの神々は、海神系と天津神系の両方の性格をあわせ持ち、海や水に深い関わりを持つとされています。

また、当社では諏訪神社のように御柱を建てる神事が行われることから、信濃地方に広く根づく諏訪信仰との関係も深いと考えられています。一方で、祭神を景行天皇の皇子である五十狭城入彦命(いさしろいりひこのみこと)とする説もあり、その由緒には多様な伝承が伝えられています。

神社の歴史

創建と起源

社伝によれば、古くは筑摩郡鷺沢嶽(現在の松本市波田鷺沢)に鎮座していたと伝わります。大化5年(649年)、信濃国司が勅命を受けて初めて勧請し、社を創建したのが始まりとされています。のちに坂上田村麻呂が有明山の賊徒を討伐した際、この神の加護があったとして社殿を造営したと伝えられています。

この伝承から、沙田神社は波田から流れ出る梓川の水霊を祀ったことに起源を持つと考えられています。旧地とされる鷺沢には今も奥社があり、水とともに生きる松本の歴史と文化を象徴する存在です。現在の社地は、古代の条里制遺構の上に位置し、古くからこの地域の中心的な信仰の場であったことがうかがえます。

社勢の発展

仁寿元年(851年)には勅命による社殿造営が行われ、仁寿3年(853年)には勅使・二条大納言有季が神位を奉ったと伝わります。延長5年(927年)に編纂された『延喜式』神名帳には、筑摩郡の「沙田神社」として記載され、正式な式内社に列しました。また、『日本三代実録』の貞観9年(867年)の条に登場する「梓水神」は、この沙田神社を指すとする説もあります。

中世から近世への歩み

鎌倉時代後期、元亨から正中にかけての戦乱により社殿は焼失しましたが、本社のみが残ったといわれています。その後、松本城を築いた島立右近が産土神として再興し、以後、歴代の松本城主が裏鬼門除けとして篤く信仰しました。神領の寄進も行われ、神社は城下の守護神として栄えました。現在の社殿が松本城に向かって東を向いているのも、城を鎮護するためとされています。

近代以降の社格

明治5年(1872年)には郷社に列し、明治34年(1901年)には県社に昇格しました。さらに明治40年(1907年)には神饌幣帛料供進社に指定され、官の保護を受ける重要な神社となりました。

境内と建造物

社殿と構造

境内には本殿、拝殿、神楽殿などが整い、荘厳な雰囲気を漂わせています。本殿は文化5年(1808年)に建てられたもので、木造の優美な造形が見どころです。境内には安産の神として信仰される「御子安神社」もあり、特に女性たちからの信仰が厚い神社でもあります。

奥社と摂末社

奥社は松本市波田鷺沢にあり、梓川上流の静かな沢を登った場所に石祠として鎮座しています。鷺沢嶽には「斎殿石(さいでんせき)」と呼ばれる巨岩があり、神聖な地として今も崇敬を集めています。御柱祭の木材も、かつてはこの地の山林から伐り出されたと伝わります。

祭事と伝統

式年御柱祭

沙田神社を代表する祭事が、式年御柱祭(6年に一度の卯年・酉年)です。古来より諏訪大社の形式を継承して行われるこの祭りは、松本市の重要な無形民俗文化財に指定されています。地域の各村が担当して御柱を曳き出し、壮麗な衣装をまとって奉納する姿は圧巻で、「衣装見るなら三の宮」と称えられてきました。

この御柱は、松本藩が所有していた山林「御林」から伐り出され、国道158号沿いを曳き出します。地域の絆を象徴するこの神事は、今も地域住民によって大切に継承されています。

年間祭事

一年を通じて多くの祭事が行われ、地域の生活に密着した信仰が息づいています。新年の「歳旦祭」や「交通安全祈願祭」に始まり、「祈年祭」「例大祭」「新穀感謝祭」など、四季折々の神事が執り行われます。特に9月26日・27日の例大祭では前夜祭・本祭が行われ、境内は多くの参拝者で賑わいます。

文化財と現地情報

沙田神社の御柱祭は、松本市指定重要無形民俗文化財として平成12年に指定されました。長きにわたり地域の人々が守り伝えてきた伝統が、今も確かに息づいています。

所在地は松本市島立三ノ宮3316で、松本電鉄上高地線の大庭駅から徒歩約8分とアクセスも良好です。静かな住宅地の中にありながら、境内に足を踏み入れると厳かな空気が漂い、悠久の歴史を感じることができます。

まとめ

沙田神社は、松本の地における歴史と信仰の象徴です。梓川の水霊を祀る古社として、また松本城を守護する神として、千年以上にわたり地域とともに歩んできました。荘厳な社殿、美しい自然、そして人々の心をつなぐ祭礼の数々。そのすべてが、信濃の伝統文化を今に伝える貴重な存在といえるでしょう。

Information

名称
沙田神社
(いさごだ じんじゃ)

松本・上高地・塩尻

長野県