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玄向寺(松本市)

(げんこうじ)

四季の彩りと歴史が息づく「ぼたん寺」

玄向寺は、長野県松本市大村にある浄土宗の名刹で、正式名称を女鳥羽山 道樹院 玄向寺(めとばさん どうじゅいん げんこうじ)といいます。室町時代に開山されて以来、長い歴史を誇るこの寺は、豊かな自然と花々に包まれ、特に初夏に咲き誇る牡丹の寺として多くの人々に親しまれています。境内にはおよそ120種・1200株以上の牡丹が植えられており、5月上旬から中旬にかけてその華麗な花々が咲き誇る様子はまさに圧巻です。

室町から続く由緒ある歴史

玄向寺の創建は室町時代、永禄4年(1561年)にまでさかのぼります。開山は長譽清光上人で、その後、江戸時代に入ると松本城主であった水野家の庇護を受け、約84年にわたって隆盛を極めました。特に水野家はこの寺を菩提寺と定め、廟所を建立して先祖代々の供養を続けたことで知られています。

また、玄向寺は播隆上人(ばんりゅうしょうにん)ゆかりの寺としても有名です。江戸時代後期、越中国(現在の富山県)出身の高僧・播隆上人がこの寺の立禅和尚を訪ね、裏山にある「女鳥羽の滝」で厳しい修行を行ったと伝えられています。播隆上人は後に北アルプスの槍ヶ岳を開山したことでも知られ、信仰の山岳文化と深く結びついた人物です。

牡丹が彩る静寂の境内

明治時代以降、玄向寺の歴代住職たちは牡丹の栽培に力を注ぎ、境内には赤、白、桃、黄色といった多彩な色の牡丹が育てられるようになりました。現在では約120種類・1300株にもおよぶ牡丹が植えられ、春には一面が華やかな花で埋め尽くされます。中には樹齢135年を超える老牡丹もあり、長い年月を経てもなお美しい花を咲かせています。

特に毎年5月第2週の土・日曜日に開催される「玄向寺ぼたん祭雅楽演奏会」は、地元の春の風物詩として多くの観光客でにぎわいます。雅楽の荘厳な音色が漂う中、咲き誇る牡丹を眺めるひとときはまさに極楽浄土を思わせるような美しさです。

見どころ豊かな境内と文化財

玄向寺の境内は、浅間温泉と美ヶ原温泉を結ぶ県道沿いに位置し、アクセスも便利です。入口の仁王門をくぐると、右手に六地蔵尊と松本三十三観音の33番札所の観音石像が並び、さらに進むと立派な山門が見えてきます。山門の左手には、槍ヶ岳を開山した播隆上人の石像と、水野家の先祖のために建立された百体観音石像が静かに佇み、訪れる人々を迎えます。

参道を進むと、水野家廟所が姿を現します。大名家の廟所として非常に規模が大きく、平成17年(2005年)には復元・改修工事が行われ、美しく整備されました。この廟所は松本市特別史跡にも指定されており、歴史的価値の高い遺構です。さらに、山門を抜けた先には樹齢450年を超える杉、松、銀杏の巨木がそびえ立ち、長い歴史を感じさせます。

本堂は室町時代末期に建立されたものが残り、風格ある佇まいが今も人々の信仰を集めています。観音堂は平成19年(2007年)に再建され、同じく平成19年には開運稲荷社も再建されました。境内全体が整備されながらも、古き良き日本の風情をしっかりと残しています。

文化財と自然美が共存する名勝

玄向寺の境内は松本市指定名勝として登録されており、四季折々に変わる景観が訪れる人々を魅了します。春の牡丹、夏の新緑、秋の紅葉、冬の静寂——どの季節にもそれぞれの美しさがあり、写真愛好家にも人気のスポットです。また、寺宝としては播隆上人の掛軸などが所蔵されており、地域の宗教文化を今に伝えています。

アクセス

玄向寺は、松本市大村681に位置し、松本インターチェンジから車で約20分の距離にあります。公共交通を利用する場合は、JR松本駅から美ヶ原温泉行きのバスに乗り、終点で下車後、徒歩約10分で到着します。温泉街からも近いため、観光の合間に立ち寄る人も多く見られます。

信仰と花が調和する癒しの空間

玄向寺は、歴史と信仰、そして花の美しさが調和した癒しの空間です。播隆上人の修行の地としての厳かな雰囲気と、牡丹が咲き誇る華やかさが同居する境内は、訪れる人々に深い感動を与えます。古刹ならではの落ち着きと自然の豊かさを感じながら、心静かに歩くひとときは、まさに日常を離れた安らぎの時間となるでしょう。

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名称
玄向寺(松本市)
(げんこうじ)

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