月瀬の大スギは、長野県下伊那郡根羽村の月瀬地区にそびえる、県内最大級の巨木です。樹高約40メートル、幹回り13.8メートルという圧倒的な存在感を持ち、推定樹齢は1500年以上とも1800年ともいわれ、古来より地域の象徴として敬われてきました。大枝が折れると変事や疫病の前兆といわれる伝承や、虫歯治癒のご利益があると信じられるなど、地元の人々にとって神聖な存在です。
この大スギには、江戸時代末期から明治期にかけて二度の伐採危機がありました。1844年には江戸城本丸再建のための木材として伐採が求められましたが、地域住民が協力して反対し、この危機を乗り切りました。さらに明治時代、神社統合により境内の木が売却される状況に直面しましたが、地元の人々が無尽講を結成し資金を積み立て、見事に買い戻すことに成功しました。こうした努力が実り、1944年には国の天然記念物に指定され、現在まで大切に守られています。
真っすぐに伸びた主幹と、根元近くから広がる力強い枝振りはまさに巨木の風格そのものです。1991年の環境庁調査では「長野県最大の巨木」であり、「全国のスギで6番目の巨木」と評価されました。また、歴史的な出来事の前に大枝が折れるという伝承が残されており、日清・日露戦争、満州事変、太平洋戦争の前にも同様の現象があったと語られています。地域の人々はこの木を「大杉様」と呼び、虫歯平癒のご利益があるとして深く信仰してきました。
月瀬の大スギ周辺は、観光客にとっても訪れやすい環境づくりが進められています。道路が狭く駐車場がなかった課題を改善するため、テニスコートやあずま屋、トイレ棟などを備えた「月瀬の大杉公園」として整備され、2015年には大型バス6台、普通車14台が駐車できる駐車場が国道153号沿いに完成しました。また、2014年の大雪で折れた枝を利用して挿し木に成功し、2017年には後継樹の植樹祭が行われるなど、未来へ継承する取り組みも行われています。
現在も地元住民による草取りやトイレ清掃が定期的に行われ、大杉と公園の美しい景観を保つ活動が続けられています。地域の誇りとして守り抜かれてきた大スギは、観光客にとっても神秘と歴史を体感できる貴重なスポットです。
月瀬の大スギへは、中央自動車道「飯田IC」から車で約60分、東海環状自動車道「豊田勘八IC」から約75分ほどです。公共交通機関の場合はJR飯田線「飯田駅」からバスを利用し、乗り換えを経て「根羽」停留所下車後徒歩20分でアクセスできます。自然豊かな山間に位置するため、車での訪問が便利です。