古代東山道が通った歴史ある山里
月川温泉郷周辺は、古代の官道「東山道」が通っていた歴史ある地域です。東山道の最大の難所とされた神坂峠の信濃側の麓に位置し、古くから人々が行き交う土地でした。
周辺には園原や信濃比叡などの歴史的な場所があり、古くから和歌にも詠まれてきた文学ゆかりの地でもあります。
やがて東山道が衰退すると、この山里も次第に静かな地域となりました。しかし、後に道路交通の発展をきっかけとして、新たな地域づくりが始まります。
恵那山トンネル建設がもたらした地域の転機
1966年(昭和41年)から進められた中央自動車道の建設計画では、恵那山を貫くトンネルの掘削が決定しました。
トンネル工事によって発生した残土を地元住民が受け入れ、その土を利用して谷筋の耕作地を再生。山間部の土地を生かした地域づくりが進められました。
1974年(昭和49年)には恵那山トンネルが貫通し、翌年には供用が開始されました。交通環境の変化によって、静かな山里だったこの地域は、新たな発展の可能性を迎えることになります。
花桃の植樹から生まれた「花桃の里」
地域振興の取り組みが進む中、1991年(平成3年)には宿泊施設「野熊の庄 月川」が開業しました。
その周辺には大桑村から伝わったハナモモが植えられ、当時の社長であった渋谷秀逸氏の思いから、旅館周辺に約1,000本の花桃が植樹されました。
その後、地域住民による「花桃の里づくり委員会」が発足。3年間にわたってさらに2,500本の植樹が行われ、合計3,500本もの花桃が咲く美しい景観が形成されました。
地域全体で守り続ける花桃の景観
花桃の里は、植樹するだけで完成したものではありません。美しい景観を守るため、地域の人々による年間を通した手入れが続けられています。
花が終わる5月下旬頃からは剪定作業が行われ、夏から秋にかけては下草刈り、冬には肥料まきなどが行われます。
こうした地道な活動によって花桃の木々が大切に育てられ、2016年(平成28年)時点では本谷川沿いに約5,000本の花桃が咲く一大観光スポットへと成長しました。開花シーズンには約20万人が訪れる人気の花名所となっています。
色鮮やかなハナモモの魅力
ハナモモは、観賞を目的として品種改良された桃です。花の形は一重から八重までさまざまで、赤、白、ピンク、紅白の咲き分けなど、多彩な色合いを楽しめます。
花径は約3~5cmと可憐で、一本の木に複数の色が咲くように見えるものもあります。桃の仲間ではありますが、花を観賞するための品種で、実は食用には適していません。
花桃の見頃と「花桃祭」
4月中旬から5月上旬が見頃
花桃の見頃は4月中旬から5月上旬です。ただし、開花時期はその年の気温や天候によって前後します。
見頃を迎えると、本谷川沿いに赤や白、ピンクの花が連なり、山々の緑と美しいコントラストを描きます。春の山里ならではの華やかな景観を楽しめる時期です。
花桃祭で春の風景を楽しむ
開花時期に合わせて「花桃祭」も開催されます。会場では地元の特産品などが販売され、花桃の景色を眺めながら地域の味覚に触れることができます。
満開の花桃を背景に写真撮影を楽しむ人も多く、春の阿智村を代表するイベントの一つとなっています。
花桃の里 月川温泉郷へのアクセス
車で訪れる場合
東京方面からは中央自動車道 飯田山本ICから車で約25分、名古屋方面からは園原ICから約5分です。
花桃の開花シーズンは多くの観光客が訪れるため、周辺道路の混雑が予想されます。特に見頃の休日などは、時間に余裕を持った移動がおすすめです。
鉄道で訪れる場合
JR飯田線飯田駅から車で約40分です。公共交通機関を利用する場合は、現地までの交通手段や運行状況を事前に確認すると安心です。
周辺の観光スポット
花桃の里 月川温泉郷の周辺には、歴史や自然を楽しめる観光スポットが数多くあります。
園原では古代東山道にまつわる歴史に触れることができ、信濃比叡広拯院では山里に息づく信仰文化を感じられます。
また、阿智村を代表する「日本一星空の里」や昼神温泉、阿智神社、古代東山道の難所だった神坂峠、雄大な山岳景観を楽しめる富士見台高原なども周辺の見どころです。
地域の思いが育てた春の絶景
花桃の里 月川温泉郷は、自然に恵まれた山里に花桃が咲いているだけの観光地ではありません。地域住民による植樹と年間を通じた手入れによって、長い年月をかけて現在の美しい景観が育まれてきました。
古代東山道が通った歴史、恵那山トンネル建設を契機とした地域の再生、そして花桃を中心とした地域づくり。こうした土地の歩みを知ることで、春に広がる華やかな景色をより深く味わうことができます。
春の阿智村を訪れるなら、満開の花桃が山里を彩る「花桃の里」を歩き、月川温泉でゆっくり過ごしながら、南信州ならではの自然と歴史を楽しんでみてはいかがでしょうか。