昼神温泉は、長野県下伊那郡阿智村に位置する、南信州を代表する温泉地です。現在の温泉は1973年(昭和48年)、国鉄中津川線のトンネル工事に伴う掘削作業の際に偶然発見されたもので、比較的新しい歴史を持ちながらも、泉質の良さと豊かな自然、整備の行き届いた温泉街で多くの観光客を魅了しています。周囲には阿智川の清流が流れ、四季折々の景観を楽しむことができ、星空鑑賞スポットとしても全国的に有名です。
昼神温泉の湧出は1973年の掘削作業がきっかけですが、江戸時代中期にはこの周辺で温泉が湧出していたという記録も残っています。『信州伊奈郡村鑑』(1740年)には近郷の人々が湯治を行っていたと記されており、さらに1711年には「湯屋権現」という記述も見られます。しかしその後、温泉は土砂崩れによって埋没し所在不明となり、長い間忘れられた存在となっていたと考えられています。
再び温泉が確認されたのは昭和48年1月14日。中津川線建設工事のボーリング調査中に湧湯が発見され、その後の試掘により毎分200リットル・泉温32.5℃の温泉が湧出しました。1975年には温泉開発を目的とした阿智開発公社が設立され、翌年には村営の保養センター「鶴巻荘」が開業。以降、宿泊施設が次々と建てられ、現在では20軒以上の温泉宿を有する南信州最大級の温泉郷へと発展しました。
昼神温泉の泉質はアルカリ性単純硫黄泉で、pH 9.7 という高いアルカリ性が特徴です。肌をなめらかにする“美肌の湯”として知られ、とろりとした柔らかい湯ざわりが楽しめます。2020年現在、複数の源泉井が稼働しており、主力の第4号井・第5号井はいずれも昼神断層北側の阿智川右岸に位置しています。いずれの源泉もpH9を超える高アルカリ性の温泉水を安定して供給しています。
温泉街が形成されたのは1970年代以降と新しいものの、中央自動車道が近くを通る利便性も相まって急速に発展しました。阿智村では温泉街の景観を守るため、ネオンサインや風俗営業など公序良俗に反する施設を厳しく制限しており、静かで落ち着いた温泉地としての雰囲気が大切にされています。
「昼神温泉 ホテルはなや」「湯元ホテル阿智川」「石苔亭いしだ」「日長庵 桂月」など、個性豊かな宿が数多く軒を連ねます。露天風呂や庭園風呂、秘湯風情あふれる浴場など、宿ごとに異なる魅力があります。
温泉街には「ふれあいの湯」「あひるの湯」といった無料の足湯が設置され、散策途中に気軽に温泉を楽しむことができます。また、温泉水を利用した公共温水プールも整備されています。
温泉街の中心には「朝市広場」があり、毎朝6時ごろから地元の野菜、こんにゃくや漬物、さらには長野県南部で伝統的に親しまれてきた昆虫食の「いなごの佃煮」などが販売され、観光客から人気を集めています。
4月上旬から下旬にかけて、昼神温泉周辺は一面が桃源郷のような花桃の景色に包まれます。国道256号線沿い約40kmに渡り花桃が咲き誇る「はなもも街道」は、春の人気ドライブコースとして賑わいます。
阿智村は環境省の星空観測で「星が最も輝いて見える場所」に選ばれた星空の名所です。標高1,200mに位置する浪合パークでは、澄んだ空気のもと満天の星が広がり、全国から多くの観光客が訪れます。
全長2,500mのロープウェイで標高1,400m地点まで上がる「ヘブンスそのはら」では、夜間に照明を一斉に消灯する“星空ナイトツアー”を開催。街明かりの届かない山頂で、まるで手が届きそうな満天の星空を体験できます。
中央自動車道の飯田山本IC、園原ICから約10分(園原ICは名古屋方面のみ利用可能)。
JR飯田線・飯田駅から信南交通バスで約30分。平日4往復、土休日2往復が運行されています。
中央道高速バス「駒場バス停/中央道昼神温泉バス停」から車で約10分。名古屋―飯田線の一部は昼神温泉経由で運行されています。