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元善光寺

(もとぜんこうじ)

善光寺信仰の原点を伝える霊場

元善光寺は、長野県飯田市座光寺にある天台宗の名刹であり、「善光寺信仰発祥の地」として広く知られています。現在の長野市にある善光寺の本尊が最初に祀られた場所であり、創建以来1400年近い歴史を誇ります。古くは「如来寺(にょらいじ)」と呼ばれ、善光寺如来の由緒を今に伝える霊場として、多くの参拝者が訪れています。

元善光寺の由来と歴史

この地は古くから麻績の里(おみのさと)と呼ばれていました。伝承によると、推古天皇10年(602年)のこと、当地の住人であった本多(本田)善光が、難波の堀江(現在の大阪市)で光を放つ仏像――一光三尊の善光寺如来を見つけ、信濃の国へ持ち帰りました。そして、自宅の臼の上に安置したところ、その臼が燦然と輝いたことから、地名を「坐光寺」と改めたといわれています。

その後、皇極天皇元年(642年)、勅命により本尊は芋井の里(現在の長野市)へ遷座され、その地に「善光寺」が建立されました。こうして、元の地である坐光寺は「元善光寺」と呼ばれるようになりました。遷座に際しては、勅命によって木彫の本尊が残され、さらに「毎月十五日間は必ずこの故里に帰り、衆生を救済しよう」という仏勅(お告げ)が残されたことから、「善光寺と元善光寺の両方にお詣りしなければ片詣り」という信仰が生まれました。

善光寺信仰と本多善光公

本多善光公は、長野善光寺の開山として知られています。彼の誕生地でもあるこの元善光寺は、善光寺信仰の源流として、長野県内はもとより全国各地から信仰を集めています。7年に一度行われる御開帳の際には、長野善光寺と同時期に「元善光寺御開帳」が盛大に執り行われ、多くの信徒で賑わいます。堂内では僧侶による親しみやすい法話が行われ、訪れる人々に深い感動と学びを与えています。

元善光寺の境内と見どころ

元善光寺の境内は落ち着いた雰囲気に包まれ、参道を歩くと歴史の重みと穏やかな時間の流れを感じます。春には桜が咲き誇り、秋には紅葉が境内を彩るなど、四季折々の風情が訪れる人々を魅了します。ここでは、特に人気のある境内の施設をご紹介します。

お戒壇巡り ― 暗闇で心を清める体験

お戒壇巡り(おかいだんめぐり)は、元善光寺を訪れる際にぜひ体験していただきたい行事です。御本堂の外陣から履物を履いたまま進むことができ、仏様の胎内を巡るとされる暗闇の中を、手すりを頼りに歩きます。途中で御本尊の真下にある開運の錠前(独鈷の形をした仏具)に触れることで、仏様と深いご縁を結ぶことができるといわれています。

暗闇の中で自分と向き合い、静かに一歩一歩進むこの巡礼は、まさに「再生の道」を象徴しています。心を落ち着けて巡ることで、日常の喧騒を忘れ、内なる平安を得ることができるでしょう。この形の「お戒壇巡り」は、本来の外陣で履物を履いたまま巡るという、初期の善光寺信仰の姿を今に伝えるものです。

宝物殿 ― 歴史と信仰の証

境内の宝物殿には、元善光寺にまつわる貴重な仏教美術品が多数収蔵されています。中でも有名なのが、光を放ったと伝えられる「霊宝座光の臼」です。この臼こそが、かつて本多善光が如来を安置した場所とされ、元善光寺の歴史を象徴する重要な宝物です。

また、藤原時代の作と伝わる愛染明王像や、穏やかな表情の御涅槃像なども展示されており、訪れる人々に深い信仰と芸術の融合を感じさせます。

平和殿と平和の鐘 ― 祈りを響かせる場所

境内には、平和の鐘と呼ばれる大きな鐘があり、訪れる人々の祈りを空高く響かせています。また、平和殿には西国三十三所の観音様が祀られ、巡拝することで平穏と安寧を願うことができます。静かな境内に鳴り響く鐘の音は、まるで時を超えた祈りの声のように心に沁み渡ります。

周辺の見どころ ― 元善光寺と共に歩く歴史の道

元善光寺の周辺には、歴史と自然を感じる名所が点在しています。その中でも特に人気があるのが、境内近くにある舞台桜です。半八重枝垂れ紅彼岸桜(ハンヤエシダレベニヒガンザクラ)と呼ばれる珍しい品種で、樹齢は約350年。春になると淡い紅色の花を咲かせ、訪れる人々を魅了します。桜のそばには、長野県宝に指定されている旧座光寺麻績学校校舎があり、歴史的建造物としても見応えがあります。

また、徒歩圏内には「竹田扇之助記念国際糸操り人形館」があり、国内外の貴重なマリオネットや人形劇文化を紹介しています。飯田市が「人形劇のまち」として知られるゆえんを感じることができるスポットです。

アクセス情報

元善光寺へのアクセスは非常に便利です。JR飯田線の元善光寺駅から徒歩約5分の距離にあり、電車を利用して気軽に訪れることができます。周辺には駐車場も整備されており、自家用車での参拝も可能です。

おわりに ― 善光寺信仰の原点にふれる

長野善光寺の本尊が最初に安置された元善光寺は、まさに善光寺信仰の始まりの地です。古の時代から変わらぬ人々の祈りが息づくこの寺には、静けさの中に深い信仰の力が宿っています。善光寺と元善光寺の「両参り」を果たすことで、心が浄化され、人生に新たな光が差し込むといわれています。

南信州・飯田を訪れた際には、ぜひ元善光寺の静謐な境内を歩き、歴史と信仰の物語に耳を傾けてみてください。その瞬間、きっとあなたの心にも、仏の光がやさしく届くことでしょう。

Information

名称
元善光寺
(もとぜんこうじ)

阿智村・飯田

長野県