王滝御嶽神社は、長野県木曽郡王滝村に鎮座する神社で、木曽御嶽山(おんたけさん)信仰の主要な拠点のひとつです。別名「王滝口御嶽神社」または「御嶽神社王滝口」とも呼ばれ、御嶽山の南側に位置する登山口「王滝口」沿いに建立されています。御嶽信仰は古くから山岳信仰の代表として知られ、修験者や多くの信者が祈りを捧げてきました。
その創建は古く、大宝2年(702年)に信濃国司・高根道基が御嶽山頂に奥社を創建したことに始まると伝えられています。その後も、歴代の国司や朝廷の勅使が登山し祈願を行うなど、国家的な信仰の対象として厚く崇敬されてきました。特に江戸時代後期の寛政4年(1792年)、行者普寛(ふかん)によって王滝口登山道が開かれたことにより、御嶽信仰は一般庶民の間にも広まりました。これにより、全国各地に「御嶽講(おんたけこう)」と呼ばれる講社が組織され、現在でも御嶽教信者による登拝が絶えません。
王滝御嶽神社は、山麓から山頂にかけて複数の社殿を有しています。山麓の里宮(さとみや)は一合目に位置し、「本社」「若宮」「岩戸権現」とも呼ばれています。主祭神は国常立尊(くにとこたちのみこと)、大己貴命(おおなむちのみこと)、少彦名命(すくなひこなのみこと)の三柱です。さらに、四合目の十二大権現には木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)が祀られ、五合目の八海山神社には国狭槌尊(くにさつちのみこと)、七合目には三笠山神社や田ノ原大黒天があり、そして山頂の奥社に再び主祭神三柱が鎮座しています。これらの社殿群は、御嶽山の信仰体系を象徴する壮大な構成を成しています。
王滝御嶽神社では、一年を通して多くの祭事が執り行われています。1月1日の歳旦祭から始まり、春分の日の春祭、7月の開山祭、そして最も重要な例大祭(7月27日・28日)では、多くの参拝者が全国から訪れます。また、9月初旬の閉山祭や、講祖である普寛・覚明行者を祀る講祖祭など、修験道と御嶽信仰が息づく行事が今なお続けられています。秋の紅葉に包まれた中での秋祭や、年末の除夜祭など、四季折々に神事が行われることも特徴です。
社内には、古くから伝わる貴重な文化財も多く所蔵されています。文亀3年(1503年)の古祭文「王御嶽山清女行法巻」をはじめ、角倉与一奉納の絵馬(寛文8年・1668年)、風流踊りの図(享保18年・1733年)など、御嶽信仰の歴史を物語る資料が数多く残されています。また、普寛行者ゆかりの品々として、愛用の茶器や護身用小刀、天狗の爪などが伝えられ、信仰の深さと修行者たちの精神を今に伝えています。
王滝御嶽神社へは、車利用の場合、東京方面からは伊那インターチェンジを経て約55分、大阪・名古屋方面からは中津川インターチェンジより約1時間50分で里宮に到着します。また、鉄道利用の場合は、中央本線「木曽福島駅」で下車し、バスにて約50分でアクセス可能です。山麓の静かな王滝村の中に位置し、霊峰御嶽山を仰ぐ壮麗な景観が広がります。
王滝御嶽神社は、古代から続く山岳信仰の象徴として、今なお多くの人々に敬われる聖地です。自然と神が共に息づく御嶽山の懐に抱かれ、祈りと修行の場としての伝統を受け継ぎ続けています。訪れる人は、霊峰を前に心静かに手を合わせ、悠久の時を超えて受け継がれてきた信仰の力を感じ取ることでしょう。