伊那市は、長野県南部の伊那谷北部に位置し、豊かな自然と古い歴史が調和した南信地方を代表するまちです。東には雄大な赤石山脈(南アルプス)、西には荘厳な木曽山脈(中央アルプス)がそびえ、その間を清らかな天竜川が縦断しています。古くから交通の要衝として栄え、現在も自然・歴史・文化・グルメのすべてを堪能できる観光地として多くの人々を惹きつけています。
伊那市の地形は、まさに山と川のまちといえるでしょう。市の東側には南アルプスの主峰のひとつである塩見岳(しおみだけ・3,052m)がそびえ、西側には中央アルプスの将棊頭山や入笠山が雄大な姿を見せています。これらの山々が四季折々の姿を見せ、春には新緑、夏には避暑、秋には紅葉、冬には雪景色と、自然の移ろいを存分に感じることができます。
また、中央を流れる天竜川は、市民の暮らしとともにある命の川であり、川沿いにはJR東海の飯田線や国道153号が走っています。これらの交通路は、古くから信州と三河を結ぶ重要な道であり、現在も地域の経済と観光を支えています。
伊那市には、登山愛好家にとって魅力的な山々が多くあります。入笠山は初心者にも登りやすく、山頂からは南アルプスと中央アルプスを一望できます。また、仙丈ヶ岳や鋸岳(のこぎりだけ)などは、本格的な登山者にも人気の高峰です。
市内には、三峰岳や戸倉山(伊那富士)など、地元の人々に親しまれる山々も多く、山野草や高山植物の観察も楽しめます。四季ごとに異なる表情を見せる自然は、訪れる人々に癒しと感動を与えてくれます。
伊那市は、歴史的にも価値の高い名所や旧跡が数多く残る地域です。特に有名なのが、桜の名所として知られる高遠城址公園。春になると「天下第一の桜」と称されるタカトオコヒガンザクラが咲き誇り、多くの観光客でにぎわいます。この公園は国の史跡にも指定されています。
また、春日城跡(春日公園)や熱田神社(本殿は国の重要文化財)など、戦国時代からの歴史を今に伝える場所も多くあります。進徳館は高遠藩の藩校として知られ、当時の学問の風を感じられる貴重な建物です。
寺院では、仲仙寺や三澤寺、蓮華寺などの古刹が点在し、歴史ある建築と落ち着いた境内が訪れる人々を迎えます。特に蓮華寺には、かつて大奥に仕えた絵島の墓があり、歴史好きには見逃せないスポットです。
伊那市は自然を満喫できる観光スポットの宝庫でもあります。南アルプススーパー林道は、美しい山岳風景を楽しめる人気ドライブコースで、秋には紅葉の名所としても知られます。また、分杭峠は「ゼロ磁場」と呼ばれるパワースポットとして有名で、全国から訪れる人が絶えません。
家族連れには、みはらしファームやみはらしの湯(羽広温泉)が人気です。農業体験や温泉、地元食材を使った食事など、心も体も癒されるひとときを過ごせます。さらに、中央道伊那スキーリゾートでは、冬のレジャーも楽しめます。
自然愛好家には、三峰川渓谷や小黒川渓谷キャンプ場などがおすすめです。澄んだ空気と水に包まれながらキャンプやハイキングが楽しめ、鹿嶺高原から眺める星空は圧巻です。
伊那市では年間を通じて多くの祭りやイベントが開催されます。1月の羽広の獅子舞に始まり、春の高校伊那駅伝やさくらまつり、夏の伊那まつりなど、多彩な行事が市を彩ります。特に伊那まつりでは、宇崎竜童作詞・作曲の「ドラゴン踊り」が披露され、市民総出で踊りの輪が広がります。
秋には南アルプスふるさとまつりや行者そば祭りなど、地元の食文化にちなんだイベントも行われ、観光客にも人気です。地域の人々の温かさと活気を肌で感じられるのも伊那市の大きな魅力といえるでしょう。
伊那市といえば、ユニークな食文化も見逃せません。代表的なご当地グルメはローメン。羊肉と太麺を使った独特の料理で、伊那市でしか味わえない珍味です。また、馬刺しやおたぐり(馬のもつ煮)など、南信地方ならではの郷土料理も人気です。
そば文化も根強く、高遠そばや行者そばは香り高く風味豊か。甘辛いダシに大根おろしを加えて食べる高遠そばは、訪れた際にはぜひ味わいたい一品です。
その他、ソースかつ丼や高遠饅頭、牛乳パンなどの名物も豊富。さらに、伊那特有の昆虫食文化としていなごの佃煮やざざむし、はちのこなども知られています。これらは古くからの貴重なたんぱく源として親しまれてきた伝統食です。
地酒も豊富で、信濃錦、井の頭、大國など、清らかな水と気候に恵まれた伊那の地酒は味わい深く、多くの愛好家を魅了しています。
伊那市は、豊かな自然と歴史、そして人々の温もりが息づくまちです。四季を通じて変化する美しい風景や、地元の祭り、心のこもった郷土料理など、訪れる人の心を満たす魅力があふれています。南アルプスと中央アルプスの懐に抱かれたこのまちは、まさに“信州の宝石”と呼ぶにふさわしい場所です。