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アンフォルメル中川村美術館

(なかがわむら びじゅつかん)

抽象芸術の深淵に触れる空間

長野県中川村に佇む唯一無二の美術館

アンフォルメル中川村美術館は、長野県上伊那郡中川村に位置し、日本で唯一「アンフォルメル」と呼ばれる抽象芸術を専門に扱う美術館です。美しい山々に囲まれた自然豊かな中川村にあり、訪れる人々に芸術と自然の融合を感じさせる静謐な空間を提供しています。

アンフォルメルとは ― 戦後ヨーロッパの芸術革新

アンフォルメル(Art informel)とは、1940年代から1950年代にかけてフランスを中心に生まれた美術運動で、「非定型の芸術」を意味します。絵具を厚く塗り重ね、形を失うほどの表現によって、戦後の混乱や人間存在の不安を映し出した絵画スタイルです。この運動はジャン・デュビュッフェやジョルジュ・マチューといった画家たちにより推進され、日本では今井俊満や具体美術協会などに影響を与えました。

アンフォルメルの作品は、形や対象を超えて、感情や精神そのものを表現することを目的としており、抽象表現主義やアクション・ペインティングと並ぶ20世紀美術の重要な流れとして知られています。

設立の背景と創設者・鈴木崧

美術館の創設者は、画家であり詩人でもある鈴木崧(すずき たかし)氏です。彼はフランスでアンフォルメル運動に深く感銘を受け、その精神を日本で紹介しようと決意しました。鈴木氏は自身の私財約2億円を投じて、美術館の土地と建物を建設。1989年8月、山林約1万平方メートルの敷地に美術館が完成しました。

当初は自身のアトリエ兼住居として設計されていましたが、後に地域の文化拠点としての構想に発展し、中川村と協力して美術館として開館されることになりました。

建築とデザインの魅力

建物の設計を手がけたのは、建築家の毛綱毅曠(もづな きこう)氏です。鉄筋コンクリート造の平屋建てで、延べ床面積は約297平方メートル。常設展示室を備えた本館のほか、高さ13メートルの象徴的なシンボルタワー、そして現在は企画展示室として活用されているアトリエ棟などで構成されています。自然の中に溶け込むように配置された建物は、訪れる人に静寂と創造のエネルギーを感じさせます。

開館への道のりと村との連携

美術館の建設後、鈴木氏の家族の相続問題により開館が一時延期となりましたが、中川村が彼の意志を尊重し、土地と建物を買い取って運営を引き継ぎました。こうして1993年10月29日、待望のアンフォルメル中川村美術館が開館。開館記念式典には鈴木崧氏やフランス大使館の関係者ら約100人が出席し、文化交流の新たな一歩を祝いました。

2005年度からは指定管理者制度が導入され、地元の美里地区管理組合が運営を担当。地域の住民とともに展示やイベントを企画し、芸術文化の発展に寄与しています。

展示内容と所蔵作家

館内では鈴木崧氏の作品を中心に、アンフォルメル運動を代表する国内外の作家たちの作品を展示しています。日本では吉原治良、今井俊満などの作品が見られ、海外からはポール・ジェンキンスやジョルジュ・マチューといった著名な作家の作品が収蔵されています。

展示は定期的に入れ替えが行われ、訪れるたびに新たな感動を味わえるよう工夫されています。また、季節ごとにテーマを変えた企画展も開催され、芸術愛好家のみならず、地域住民や観光客にも親しまれています。

利用案内とアクセス

開館情報

開館日:火・木・土・日曜日および祝祭日
開館時間:9:00〜16:00
休館期間:冬期(12月〜2月)

入館料

大人:200円(団体150円)
小・中・高校生:100円(団体50円)
6歳未満:無料
※団体割引は20名以上から適用されます。

アクセス

中央自動車道松川インターチェンジから国道153号線を経由して約30分。公共交通機関を利用する場合は、JR七久保駅から車で約25分の距離にあります。周囲には信州らしいのどかな田園風景が広がり、ドライブにも最適なルートです。

芸術と地域が共鳴する空間

アンフォルメル中川村美術館は、単なる展示施設ではなく、芸術と地域の心を結ぶ拠点としての役割を担っています。村民による運営、自然と調和した建築、そして抽象表現の奥深さを感じさせる展示内容。そのすべてが調和し、訪れる人々に静かな感動を与えます。

中川村の豊かな自然とともに、戦後芸術の革新を今に伝えるこの美術館で、人間の内面と創造の力に触れてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
アンフォルメル中川村美術館
(なかがわむら びじゅつかん)

伊那・駒ヶ根

長野県