ペイネ美術館は、長野県北佐久郡軽井沢町にある美術館で、軽井沢タリアセン園内、塩沢湖のほとりに静かに佇んでいます。この美術館は、フランスの著名な画家・イラストレーターであるレイモン・ペイネ(1908年~1999年)の世界で初めて、そして日本で唯一の個人美術館として、1986年7月26日に開館しました。
館内には、ペイネが描いた原画、リトグラフ、ポスター作品などが多く展示されており、その多くは彼の代表作である「恋人たち」のシリーズを中心としています。さらに、彼の愛用品や写真、陶磁器、また恋人たちを模した人形なども展示されており、作品世界をより深く味わうことができます。
年におよそ3回の展示替えが行われており、そのたびに異なるテーマや視点からペイネの世界が紹介されるため、何度訪れても新しい魅力を感じることができるのが魅力です。また、美術館限定のグッズやペイネの作品をあしらった商品も多数販売されており、お土産や記念品としても人気があります。
ペイネ美術館の建物自体もまた、芸術的な価値を有しています。この建物は、近代日本建築の父とも称される建築家アントニン・レーモンドが、1933年(昭和8年)に自身の夏のアトリエとして軽井沢の南ヶ丘に建てた「軽井沢・夏の家」を、現在の場所に移築して活用したものです。
なお、レーモンドとペイネは別人物であり、両者に直接的な関係はありませんが、この歴史ある建築がペイネの作品世界と見事に融合し、訪れる人々に独自の空間体験を提供しています。
開館初日には、レイモン・ペイネ本人と妻ドゥニーズ・ダムール夫人が来日し、開館式典に出席したという貴重なエピソードがあります。さらに、2011年には開館25周年を記念して、ペイネの一人娘であるアニー・ペイネ氏が名誉館長として就任し、館の歩みにさらなる重みを加えました。
軽井沢のペイネ美術館に続き、1988年にはペイネが晩年を過ごした南フランス・アンティーブ市にも美術館が開館。また、1998年にはペイネの母の故郷であるブラサック・レ・ミンヌ市にも美術館が開かれました。これらの美術館は、彼の愛とユーモアに満ちた作品を国境を越えて伝える拠点となっています。
レイモン・ジャン・ペイネ(Raymond Jean Peynet)は、1908年11月16日にフランス・パリ16区(パッシー)で生まれました。彼は「ペイネの恋人たち」で知られる、愛とユーモアをテーマにしたイラストを描き続けた画家・漫画家であり、彼の作品は世界中の人々に愛されています。
15歳で産業装飾美術学校に入学し、優秀な成績で卒業。卒業証書は映画発明者のリュミエール兄弟から手渡されました。その後、広告代理店「トルマー社」に入社し、パッケージデザインなどを手がけた後、1939年に独立。1942年には雑誌「リック・エ・ラック」にて「恋人たち」シリーズの連載を開始し、一躍人気画家の仲間入りを果たします。
1930年に結婚したドゥニーズ夫人との穏やかな生活は、彼の創作においても重要な役割を果たしており、後年「私たち夫婦こそ、恋人たちのモデルである」と語っています。その言葉どおり、彼の作品には現実に根差した優しい愛情が表現されています。
開館時間:午前9時から午後5時(冬季変更あり)
所在地:〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町長倉217
休館日:年中無休(ただし展示替えや冬期の休館あり。2月中は閉館)
アクセス:
・JR「軽井沢駅」からバスで「塩沢湖」下車すぐ
・しなの鉄道「中軽井沢駅」からバスで約15分、「風越公園」下車、徒歩約10分
・上信越自動車道「碓氷軽井沢IC」から約20分
ペイネ美術館のある軽井沢タリアセン内には、他にも「軽井沢高原文庫」や「深沢紅子野の花美術館」などがあり、自然と芸術を同時に楽しめる施設として人気です。
また、近隣には「ムーゼの森」(軽井沢絵本の森美術館、エルツおもちゃ博物館)、「風越公園」(スカップ軽井沢、風越アリーナ)などもあり、家族連れから芸術愛好家まで幅広い層に親しまれています。